Alice in the sky 〜心の病と創作とたわいのない話〜

今後不定期となります。申し訳ありませんがよろしくおねがいします。申請で診断してもらったら否定型精神病とかかれてました。よく変わる。改めて心の病持ちでよろしくお願いします。スマホで書く日が増えるかも。
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とびっきりの恋をしよう! 第二部 第二話 太陽の卵と月の卵

 

レガーシ邸に戻ってほどなくして育成は始まった。天の小道というまた違う世界の空間に通じる道を歩いて育成に毎日行くのだ。いつ終わるとも知れない試練がサーコとレンに課せられた。

 初日、サーコはレンと緊張しながら太陽の間に赴く。そこにはゆりかごのような物体が一つあった。サーコの頭上にあった花冠をとって真ん中にはめられている石をに触れるとそれはころんと出た。手で慌てて受ける。レンの片手とサーコの片手の間にそれは落ちた。二人でゆりかごに入れる。やがて石は淡く光りだした。

「喜んでいるの?」

 サーコが尋ねるとまた光がまたたく。意志を持っているようだ。

「サーコ。この石の事がわかるのか?」

 不思議そうにレンは聞く。

「なんとなくね。方法もわかった。赤ちゃんにしてあげるように優しい気持ちを送ってあげたらいいみたい」

 なんだか悟りきってるサーコにレンは違和感を覚える。太陽の娘というのはこういうことなのかと改めて思い知らされる。サーコがなんだか遠くへ行ってしまったように感じた。

「何、子犬のような眼をしてるの。サーコはサーコのままだからね!」

 気持ちを見破られたような言葉に意表をつかれる。サーコがレンの片手をぎゅっとにぎりしめてくる。レンも強く握り返す。サーコが笑う。そのひまわりのような笑顔に吸い込まれそうになる。照れ隠しに思わず上から目線で話す。

「俺の妃でよかったろ?」

 その言葉にサーコも安心する。不遜なのがレンなのだ。

「まぁね。さ。帰りましょ。育成は明日からみたいだわ。ベッドで早く眠りたいだって」

 相変わらず魔術を使ったかのような世界のサーコにレンは驚くが黙っていた。いつも普通の女の子なのだ。それをサーコが一番望んでいるとレンは一番よく知っていた。高い身分などいらないと口を酸っぱくして言っていたから。帰り道いつしか二人は恋人つなぎで歩いて帰っていた。サーコが本当に神ともいえる本当の太陽の娘としても最初に出会ったままの大事なサーコだった。レンの心にはサーコの存在が深く刻まれてしまっていた。政争の道具にしたくない。いっそ王位継承権を放棄しようかと考えてしまう。太陽の娘が人間となり夫ゲブとともにエデンの西井移り住んだように。普通の人間になりたかった。だが兄の死を無駄にはできない。そして覇王の指輪の持ち主としても。サーコが言う通りこの世界に平和をもたらすのが自分たちの役目だった。

「なーに難しい顔してるの。もうレガーシの部屋よ」

「あ、ああ」

 慌てて手をほどく。

「おや。仲のよろしいことで」

 レガーシはにこにこしている。何かを企んでる証拠だ。

「育成はどうでしたか? サーコ」

「明日からだって。眠いから寝かせてくれって」

「そうですか。ではサーコもレン皇子も次の仕事にとりかかってください」

「次の?」

「仕事?」

 二人はきょとんとしてレガーシに問いかける。

「読書のお時間です」

「げっ」

 レンが下品な声をだす。

「俺はパス」

「皇子。いずれ覇王になろうというお方が国の成り立ちも知らぬままでは困りますよ」

「その仕事はサーコに任せる。サーコから話を聞く」

「ずるーいレン。一緒に勉強しようよー」

 サーコの頼みとなれば断りづらい。結婚せずともすでに尻にひかれている。

「わかった。かわりに翻訳してくれ。あの字は読めないんだ」

「だったら50音からはじめようよ」

「なんだそれ?」

「ひらがなの読み方。本を写してひらがなうってあげる。これならわかるでしょ?」

「うぅ・・・。ああ」

 サーコがそこまで手をかけてくれるというなら断れない。しかなくレンはうなずいた。

「さぁさ。勉強の後にはサーラのお菓子がありますから頑張りましょう」

 調子のいいレガーシの言葉にがっくりうなだれるレンだった。

 

 次の日から育成が本格的に始まった。天幕の部屋から天の小道を歩いて太陽の間に向かう。レンは何もする必要がなかった。サーコが手をかざして優しい光がまたたくのを目にするだけだった。自分は何のためにいるのかわからなかった。レガーシが近しいものがそばにいるといいと言っていたがその役目はわからなかった。

 そんな日が来る日も来る日も続いた。だが、ある日それは突然に起こった。石が燃えるような球体に変わったのだ。

「何?!」

 思わず腰の剣に手をやる。サーコが制する。

「レン大丈夫。この子が新しい太陽として生まれたの。これからもっと力がいるの。レン、助けてね」

「ってなにすりゃいーんだよ」

 散々ほっとかれてやさぐれていたレンはサーコにかみつく。

「手を握ってほしい」

「?」

「だから手を握ってほしいの! 一人じゃ力が足りないから!」

 顔を真っ赤にしてサーコが叫ぶ。

「手を握るだけでいいのか?」

 うん、とサーコはうなずく。

「レンの優しい気持ちもこの子は欲しいといってる。二人でこの子を育てよ」

「結婚もしてないのに子育てか?」

「何かおかしい?」

「いや、なんでも。不思議だなと思って。やっぱ俺たちは結ばれる運命なんだなと思って。ついでに本当の子育てしないか?」

 言ったとたん背中をばしっと叩かれる。

「レンの意地悪。このスケベ皇子!!」

 サーコは太陽の間をでると走り去っていく。

「おい。待てってば」

 レンも慌てて後を追う。

 レガーシの部屋にもどるとサーラの胸に顔をうずめて泣いているサーコがいた。

「レン様」

 サーラが恨みがましい目でレンを見る。

「何を言ったのですか? 帰ってくるなりあの状態ですよ」

 レガーシも聞く。

「いや。太陽の子育てをすることになったから俺たちも子育てしないかと・・・」

 まぁ、とサーラが眉をつりあげる。

「レン様、年齢を考えてください。サーコが親になるには早すぎます。サーコの事を考えていましたか?」

 その指摘でレンはあ、と口を押えた。この国では15歳ぐらいで結婚するのはおかしくない。しかし露骨に親になるための行為の言葉をぶつけていたのだと気づく。サーコの国では成人はもっと遅い。結婚ももっと後だと言っていた。

「ごめん。サーコ。俺、自分のものさしで考えていた。ごめん」

 泣いている背中にそっと触れる。

「レンなんて嫌い。大っ嫌いだもん」

 ぐすぐす鼻を言わせてサーコが言う。

「俺は好きだ。何があっても好きだ」

「レン?」

 固い意志をこめた言葉にサーコが振り向く。その瞬間すかさずレンはサーコを抱きしめていた。

「ごめん。サーコ。結婚も子作りもサーコの世界の。ものさしでいい。俺はいつだってサーコが好きだから」

「レン?」

「愛している。サーコ」

 突然の愛の告白にサーコは戸惑う。いつの間にレンはそれほど想ってくれるようになっていたのだろうと。ぎゅっと抱き着く。

「サーコ?」

「私もレンを愛してる」

 小さな声でサーコも告げる。レンが一層抱きしめる腕に力をこめる。

「痛い。レン」

「あ。ごめん」

 慌てて離すと今度はサーコがしりもちをつく。

「ごめん」

 助け上げるとまた抱きしめる。

「レン〜〜〜。色ボケすぎー」

「なんだその色ボケって」

「すけべってこと」

「なにぃ」

 痴話げんかが始まる。まだ育成は始まったばかりであった。

 

 来る日も来る日も育成に向かう。だが、少し大きくなった球体は成長をとめてしまった。それでもサーコは育成に力をこめる。根をつめるあまりサーコの顔色が悪くなってきた。いつ倒れてもおかしくなかった。一旦育成を止めるようにレガーシもレンも進言したがサーコは首を振った。

「あの子は私とレンの気持ちを欲しがっている。さみしい思いをさせちゃダメ」

「だが・・・」

「大丈夫。レンがいてくれるからなんだってできるよ」

 健気なサーコにレンは言葉を失う。この小さな女の子の体にどんな力があるのだろうかと。しかしやはり、無理がたたったサーコはある日、太陽の間で倒れてしまった。レンはサーコを抱き上げると天幕の部屋に急いだ。

「サーコが倒れた!」

 戻るなり叫ぶ。

「こちらへ」

 レガーシがサーコの部屋へ先だって歩く。レンは走っていきたいところだったがレガーシの早足についていく。部屋にはサーラがいた。

「私がサーコを見ます。レン様はレガーシとお戻り臭い」

「でも!」

「私には医術の心得があります。大丈夫です。サーコは強い子だから信じてあげてください」

 仕方なしに納得するとレンはレガーシとともに出ていった。レガーシの部屋につくなりかみつく。

「なんで知ってるんだ。知ってたら止めろよ!」

「私も送り出したときはわかりませんでした。ただその後カードが一枚光ってサーコの危機を知らせたのです。レン様でなければサーコは救えなかったのです。私は天の小道ははいれませんから」

「どういうことだ?」

「太陽の間に入れるのは太陽の娘とその伴侶だけ。私やサーラは見てるしかないのです」

 そうなのかと無理やり納得する。

「サーコは大丈夫ななんだな?」

「今、サーコは神のような存在。神は死にません」

「そうか」

 サーコの変化を目の当たりにしているレンもそれは納得できた。最近は神々しくもあったから。

「その代わりにレン様にはしていただくことがあります」

「俺が?」

 はい、とレガーシが微笑む。何かを企んでいるとレンは確信した。

「実は太陽だけでなく月も櫃世なのです。ですが今回産まれたのは太陽のみ。いずれ月も生まれるだろうと見守っていましたがそうでもないようです。なのでレン様にはサーコが元気になるまで月を探していただきます」

 突拍子もない言葉に驚きながらもサーコの負担が減るならとレンはうなずく。

「サーコを頼む」

 それだけ言うと用意されている部屋へ戻る。そして旅支度を始めた。終わるとサーコの部屋に行く。サーラはおらずサーコはすやすや眠っていた。ほほに血の気がよみがえっていて少しは楽になったのだと感じてほっとする。

「ごめんな。そばにいられなくて。俺、月の卵さがしてくる」

 それだけいって額にキスする。

「レン?」

「起こしたか。ごめん」

 そう言ってまた額にキスする。

「どうしたの? どこへ行くの?」

 サーコの顔が不安げになる。

「ああ。月の卵を探しに行かないといけないんだ。どうも太陽と月は一対らしい。エデンの東にでも行ってみるつもりだ」

「その必要はないよ」

 サーコが微笑みながら言う。弱弱しい微笑みだったが美しかった。サーコは女の子から乙女に変わりつつあった。

「?」

「だからレンがすでに月の卵を持ってるの。ほら。首にペンダントかけてるでしょ?」

「これがどうかしたか?」

 服の下から出すと石が光っている。ただの母親の形見のはずだったがどうも違うらしい。

「そのペンダントなんて言うの?」

「月のしずくと母上はいっていた。ってことは?!」

 レンの中で驚きが広がっていく。

「これが月の卵か?」

「私たち結ばれるの誰かが決めていたみたいね。月と太陽のコンビなんだから」

「レガーシ!! サーラ!!」

 レンは荷物を置くと天幕の部屋へとか駆け込んでいった。

「ほんと天然なんだから」

 サーコはそういうとまた心地よい眠りに落ちていく。レンはどこにもいかない。先ほどの不安は払しょくされていた。向こうではさぞかし驚いているだろうとサーコは眠りながら意識の底で思っていた。

 太陽と月の子育てはまだまだこれからだった。本当の育成はこれからだ。月の卵をどうすればいいかもまだわからない。正念場はこれからだった。

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