Alice in the sky 〜心の病と創作とたわいのない話〜

今後不定期となります。申し訳ありませんがよろしくおねがいします。申請で診断してもらったら否定型精神病とかかれてました。よく変わる。改めて心の病持ちでよろしくお願いします。スマホで書く日が増えるかも。
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太陽の娘 四話 太陽と月の永遠回帰の神話

 

 

 

気づけば愛美は集中治療室のようなところに寝かされていた。前回とは雰囲気が違う。

記憶をたどろうにもところどころしか覚えていない。サメットの力がすごすぎて自分は死んだと思っていた。

「心配しましたよ。もう少しで命を失うところだったのですよ」

少し怒りのこもった声で話していたのはゲブだった。

「命が縮むかと思いましたよ」

「ゲブ・・・」

名を呼んで愛しさがこみ上げてくる。恋人でなくていい。こうしてそばにいられたらそれでいい。

手首から何かがゲブの手首につながっている。きらきらしたものが流れている。不思議そうに見つめているとゲブが答える。

「私の長い命の力を送っています。もうすぐ安定しますからね」

穏やかで優しいまなざしに思わず愛美は泣きかけたがぐっとこらえた。するとゲブが真剣な表情をした。見たことのない表情だ。

「あなたを失うのは耐えられません。私こそこの世界であなたのそばにいてもいいですか?」

信じられないといった表情の愛美にゲブは問う。

「もう手遅れですか?」

愛美はぶんぶんと首を振ろうとして固定されているのに気付いた。

改めて答える。

「手遅れじゃないです。ゲブ大好き!」

抱きつこうとしてまたも体が固定されて愛美は悪態をつく。

「とりあえずは怪我の治療です。抜け出さないように私が見張ってますからね」

「はーい」

しぶしぶ愛美は頷いた。

 

「地と一緒になったか。それもよい」

水晶にうつりこんでいる映像を見てアケトが優しいまなざしを送る。

ぼろぼろになっていた愛美の体はあっという間によくなった。お見舞いに行く時間がないと他の星にぼやかれてしまった。

だが、サメットの脅威からこの宇宙を守るにはちょうど良かった。

研究所で調べた結果育成はあと一回で十分だとわかった。

愛美はそれを知ると走って育成所に行きかけてゲブに説教を喰らう。

「怪我の完治が先です」

「怪我は治ったわ。力も十分ある。心配なら来る?」

「星が育成所に行くこと自体タブーです。前回は心肺停止でしたから特別です」

「じゃ。明日ならいい?」

「女王や補佐官、他の星たちも見送りたいでしょうから連絡しておきます。私だけ見送りたいのですが・・・ね」

熱い視線を受けて愛美は頬を染める。

「そんなあなたも素敵ですよ」

ゲブは愛美の頬にキスをするとさっと愛美の部屋から出て行った。いつまでも愛美はキスされた頬を押えていた。

 

翌日研究所の前に女王と補佐官、星が集まっていた。

 

すべての視線を受けて愛美は頷く。

「行ってきます」

そういって愛美は育成所に向かった。

 

育成所では太陽を喰らわんとサメットの闇が覆いかぶさろうとしていた。

それでも愛美はにっこり笑うとサメットの闇のカーテンを見つめていう。

「私のすべての愛情をあなたに送るわ」

力を太陽に送り始めると太陽はかがやき始め次の瞬間スパークした。

まぶしい光に愛美は瞼を閉じる。

気づけば愛美はサメットがいる宇宙空間にいた。呼吸も普通にでき今までの育成所の異空間と何ら変わりはなかった。アケトによく似たさびしげな瞳を持った女神がそこにいた。

「破壊は再生。あなたの力から再生の力が生まれるわ。一つになりましょう」

愛美の申し出にサメットは一笑に付した。   

「バカなことをいう。ネクベトだ」

アケトに失恋し、ゲブと愛をはぐんだ愛美にはうれしいことも悲しいことも受け入れられる無償の愛が生まれていた。光がサメットを包む。

「やめろ。私を食うな」

「サメット。何も抵抗しなくていいの。光と闇。創造と破壊は表裏一体。あなたが消されるわけじゃないわ」

光がすべてサメットを包んだ。優しい愛美の声にサメットは抵抗しなかった。アケトと同じ。闇だけだったからさみしかった。闇は夜。夜は月の光がすべてを作る。

太陽から小さな太陽が生まれた。

「月ね。サメット。さみしい瞳をしている人たちを優しく包んで。あなたにルーという名前をあげる。破壊でない月の女神ルー。きれいでしょ?」

太陽と月がだんだん愛美から離れ始める。

太陽と月の独り立ちだ。

「ほんと手のかかるあなたたちだったわ。もう大丈夫。万物の命の元。新しい命をたくさんはぐくんで」

太陽と月がぐんぐん遠のいてくる。いつしか愛美は研究所の前にいた。

ゲブが駆け寄って抱きしめる。

「また倒れるかと思いました」

「大丈夫。太陽は独り立ちしたし。サメットは月になったわ。もう。大丈夫」

愛美を抱きしめながら肩を震わせているゲブに愛美はぽんぽんとあやすように叩く。

「プロポーズしたからには星の仕事終わらせて一般就労してよね」

「一般就労?」

「ゲブ。星の役目が終わったらどうやって生活しようと思ったの?」

「さぁ?」

「ゲブは本の虫だから外のことなんかわかりゃーしないさ」

ケプラがからかう。

「ウェディングドレスは着ないのですか?」

 うきうき気分のメヘトが聞く。

「そうね。結婚式をしましょう」

「それはよいことだ」

「陛下? ネフェル?」

来た当初とは明らかに違うトーンでいそいそと計画を練り始める女王達に愛美は驚く。

「普段はとてもチャーミングは陛下なのですよ」

そっとゲブがフォローを入れる。

「陛下。星と太陽の娘との結婚式をするのは・・・」

ホース一人だけこのカップル誕生に異議を唱えている。

アケトはさっさと場所を離れている。

当分まだまだ太陽の登る丘ではハプニングの連続が待っているらしい。

愛美はこの幸せが逃げませんようにとそっと願った。

 

新たなる太陽ラー、月のルー。

どんな世界を作り上げていくのだろうか。

 

太陽と月の永遠回帰の神話はまた始まった。

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