Alice in the sky 〜躁鬱と創作と時々朱印〜

日月水でやってきましたがなかなか更新できず今後不定期となります。申し訳ありませんがよろしくおねがいします。長年統合失調症と思ってましたが今日躁鬱病と訂正入りました。改めて心の病持ちでよろしくお願いします。
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# ホーンテッドハウスリサーチファイル1 5

AT THE OFFICE

あたしは寒暖計を見つめつづける。温度は徐々に上がっていく。肌が暖かな空気を感じ始める。

何が起こったの?

ぼんやりとした記憶をたどり寄せる。

ここで・・・変な石を拾って。紗夜が変になって。風が起こって。首を絞められそうになって。それから・・・それから・・・石が紗夜の中に消えていった。

そして紗夜は消えたんだ!

あたしはようやく正気に戻ると足元のものをけちらかして窓際までいって外を見下ろす。

人一人いない。

探さなきゃいけない。あのままじゃだめ。もとに戻さないと。

でも方法がわからない。どうしたら・・・いいの?

窓のサッシを握り締める力がこもる。

ふいにあの尊大な顔が浮かんだ。

「彼」ならなにかできるかもしれない。いっぱしの所長なんだから。

あたしは一条の光を見出して森野家を飛び出した。

住宅街、駅前を通り過ぎてひたすら走り続ける。

あの人というかあいつならこの手のことはおちゃのこさいさいのはず。

この時間帯ならまだ事務所にいるはず。

あたしは通りを抜けてビルの階段を駆け上がる。

おもいっきりバタン、とドアを開け放つ。

「シュリ、いる?!」

シュリはちらりと視線をこちらに向けたと思ったらまた資料に視線を落とした。

「大声を出さなくとも僕はいるが」

この一声で酸欠だったあたしは床にしゃがみこむ。いつだってこのペースなんだから人が困っているときぐらい察しってよっ。と言いたかったけれども言葉にならなかった。

のどが痛い。

「レイ。水を」

あたしはコップを受け取りそれを飲んでなんとか会話ができるように回復する。

体力だけは自信があるのさ。

「で?」

めずらしくあたしが酸欠状態になっているのを認めてシュリが問いかける。

あたしは今しがた起こった出来事を混乱しつつ話す。脈絡が無いかもしれないけどそれもいたしかたない。

「そうか」

それだけ言うとシュリもレイさんも何事も無かったかのように過ごしている。

「話聞いてそれはないんじゃないの? 探してくれ・・・」

「ない」

あたしの言葉をとってシュリが却下する。

シュリの無関心そうな顔つき。

ないってあっさり言ってのけないでよっ。

ひとっこ一人の命抱えてるんだからねっ。

あまりのことに口をぱくぱくさせているとあたしにさらに追い討ちをかける。

「依頼料を払えるほど金がないはずだが?」

うっ。

あたしはそこでつまずく。一応。依頼はまともになかったが相談はあった。そこに提示されている額を小耳に挟むこと数回。確かに膨大な資金が必要なのはわかっていた。でも仮にも仕事場の人間が頼んでいるのにそれはないんでない?

でもだめだ。あのシュリの調子だと絶対に助けてくれない。何を言っても聞く耳持たないだろう。

だったら。この行動しかない。

「自分で探しに行く」

シュリを信じていたあたしがお馬鹿だった。こうなったら一人でも探して正気に戻す。

さっき首絞められたときは怖かったけれども紗夜を失うほうがずっと怖い。再び事務所を出そうなあたしの腕をシュリがつかむ。

「馬鹿、か。お前は。相手は人間じゃない」

「人間じゃなかろうが、馬鹿だろうが、あたしが探さないと誰が探すのよっ。頼みの綱も切れたんだからっ」

こみあげてきた涙が振り向いたと単に飛び散る。

「大丈夫です。森野紗夜は私達が探し出します」

へ? さっき金が無いからだめ、って言ったじゃないの。

「これは正式依頼ではないですからね」

レイさんが不機嫌そうに言う。

「上からの命令ですよ」

ほへっとしているあたしにレイさんがさらに機嫌悪くして言う。

上・・・って。ああ、あそこか。思い当たるところがひとつだけある。それはシュリたちの出身地。これ以上は内緒だけどね。

「そういうことだから。晴美は家に帰れ。今夜は帰り道にレイを付き添わせる。夜は魔物を助長させるからな」

仕方ないといった風にシュリが言う。

それに、とレイさんが付け足す。

「あと五日は現れないと思いますよ」

五日って・・・あの、あの事件となにかかかわりがあるの?

あたしの胸に不安が横切る。

あれが紗夜の、いや彼女の仕業だとしたら。

そんなのは嫌だ。親友がそんなことしているのは嫌だ。

考え事をしているとレイさんがあたしを引きずって出そうだったのであわてて足をふんばる。

「往生際が悪いな」

「悪いよ」

「何が言いたい?」

あたしはにっと笑う。

「あたしの親友なんだからあたしも同行してもいいよね?」

「却下。レイ」

シュリが即座に否定してレイさんが引きずろうとするがあえてふんばる。

「あたしだってここの一員なんだから一部始終見てもかまわないでしょうに。あなたたちの正体も知っているんだからね。これがばれたら上はどうするだろうねぇ」

その言葉にシュリもレイさんも少々難しげな顔つきになる。

「そんなに来たければくればいい。その代わり、自分の身は自分で守れ」

「はぁい」

あたしは元気よく返事した。

「シュリ、ひっかりました」

唐突にしごく冷静にレイさんが言う。

シュリは無言で立ち上がるとすたすたとドアに向かう。

何がひっかかったの?

問おうとしても答えが分かるような気がして黙っていた。

 

二人の足は速い。

女の子連れているくせに完全に存在を無視してる。

でも無理やり頼み込んだのはあたしなわけでいたしかたなかった。

街を抜けてうすぐらい林の中に入る。ただでさえ光が届かないのに夕刻になるともっと暗い。だけどそんなこと言ったらあっというまに追い返されちゃう。

「そんなに怖ければ来る必要は無いが?」

後ろに目があるんじゃないかといったシュリの言葉にあわてて否定する。

「こわくないもん。紗夜が元になってくれるまでどこへだっていくわよっ」

大きな声で叫んでしまい、それが虚勢であることががはっきりばれてしまった。

レイさんがくすくすと笑う。この人の笑い声は手に負えない。

次の言葉に身構える。

「気をつけるんですよ。何があるかわかりませんからねぇ」

レイさんの声は非常にポップな春の声だがその言葉内容とは反比例する。今だって言外に足手まといになるな、というきつーいお言葉が入っているのだ。

林を抜けてふいに視界が開けた。

ここってその昔、防空壕とかあったところじゃない?それを思うと背中がぞくっとする。

ここで何人もの人が死んだ場所なんだ。

“来タノカ”

紗夜はそこにいた。ううん。紗夜についている何か。

二度目の再会であたしはもうだまされなかった。

レイさんが言う。

「おとなしく浄化させてくれれば話は早いのですがねぇ。無理なようですね」

レイさんの目つきがいっそうきつくなった。シュリは始終無言でポーカーフェイス。何を考えているのかわからない。

“モウ少シデコノ世界ヲ手ニイレルコトガデキル。邪魔ナドサセナイ“

紗夜の家での光景が再現される。風があたしたちを振り回そうとしている。

油断しているうちに彼女の手の中から光のようなものが飛び出た。

それがあたしたちの目の前でぱしりと音を立てて消滅する。結界、みたいなものがあるのだろうか?

「あくまでも抵抗のようですね」

レイさんが手を上げたときあたしはその腕にしがみついた。

「何がついているいかわからないけれど「あれ」は紗夜の体なんだからねっ。指一本怪我させたらだめなんだからっ」

「これ以上被害者がでても言いというならかまいませんが」

それは困る。ひじょーに困る。

あたしはしばらく無言になる。

「そういわけじゃないけど・・・」

「それなら黙ってみていてください。これは私達の仕事ですから」

レイさんの繰り出した光玉が紗夜めがけて飛んでいった。

あたしはみていられなくて反射的に紗夜のところに飛び出していた。一緒に地面を転がる。あたしの頬にはさっきの光玉でかすり傷ができていた。

「大丈夫?」

あたしが立たせて言葉をかけて「彼女」は私の手を振り払った。

「あなたなんかになにが分かるの?!」

思いかけない紗夜の言葉にあたしは驚いた。声はさっきのまがまがしいものじゃなくて紗夜そのものだった。もっともとげとげしい感じはぬぐいきれなかったけれど。

「あなたはいつだって友達に囲まれて幸せに暮らしている。でも私はどう?

毎日同じ学校、学校、学校。勉強する内容まで一緒。適当にしていたら成績は落ちて冷たくなる家族。私の居場所は一体どこなの? こんなつらいままじゃ死んだほうがましよっこのまま眠って忘れてしまったほうがいいっ」

“コノ女ノ言ウトオリダ。 私ハコイツの願イドオリ眠ラセテヤッタ。ソノ代ワリ、コイツノ体ヲ自由ニ使ワセテモラッタ。ドコガ悪イ? コイツノ願イガ我ノ封ジコメシ封印

を解イタノダ”

封印。きっとあたしが手に取った黒ずんだ石のことをさしているに違いない。あれがこの悪魔の切り札。でもそれは紗夜の体の中に入ってしまった。どうしたらいいの?

一人悩んでいるとシュリが言葉を発した。

「だが、実際に女の生気を吸い取っている。二人の間のことならば我々もさっさと手を引いているが、あいにくその防空壕の中にでも行方不明者がいるはずだ。勝手ないいぶんはいい加減にするんだな。こちらは力ずくでもなんでもするつもりだ」

シュリやレイさんは紗夜を殺すつもりなの?

あたしはその事実に怖さと悲しさでいっぱいになって涙がでそうになった。

でもこんなところでめそめそしたって意味は無い。

ねぇ、とあたしは紗夜に呼びかける。

「学校に行きたくなかったらそれでいい。でも周りを見てみて。あたしも千秋もあやもあなたのことを心配しているよ? 紗夜のお母さんもすごく心配していた。だた、接し方がわからないだけ。うち、離婚寸前までいってたでしょ? その頃はみんな自分のことをわめきちらすので精一杯だった。でもちゃんと向き合うようになったらうまくいき始めた。まだまだ危なっかしいけれど」

あたしはそこでいったん言葉を切る。

そして再び深呼吸して語りかける。

「いつまでも紗夜は私達の親友だよ。気持ちわかってあげられなくてごめんね。悩んでいるなんてしらなかった。でも今なら気持ちを聞いた今ならまたやり直せるよ。だってあたしは紗夜のこと大好きだよ。ひとりよがりでもなんでも好きだよ」

「嘘」

「本当だよ。でなきゃ毎日迎えに来ないもん。紗夜の元気な笑顔がみたくて行っているんだもん。作り笑顔じゃなくて本当の紗夜の笑顔がみたいんだもの」

沈黙が落ちる。

それでも紗夜というべきか彼女というべきかわからない彼女達が片手を挙げ始める。

次の攻撃かもしれない。だけど、その腕は震えていた。きっと心の攻めぎあいが始まっているんだ。、

「帰ろう。紗夜。あとはシュリとレイさんが処理してくれる。また学校で大騒ぎしようよ」

“コザカシイ娘メ”

今度は確実に彼女が叫ぶ。だけどそれ以上彼女は何もできなかった。

あたしはレイさんの制止をふりきってどんどん紗夜に近づく。あたしは思いっきり紗夜を抱きしめた。

「大好きだよ。紗夜。いつまでたっても友達なんだから」

「はるみ・・・?」

また正気に戻った紗夜からあたしの名前がこぼれた。

「いっしょに帰ろ」

紗夜の首がうなずきかけたその瞬間彼女がとって代わってしまった。

あたしは馬鹿力で突き飛ばされてしりもちをつく。

“コウナレバ最後の手段。コノ娘ノ血デ我ガ復活ヲ完成サセルマデ”

いつのまにか彼女はポケットからナイフをとりだすと首筋につきつけた。

「だめっ」

あたしと彼女はナイフを取り合って地面に転んだ。激しいとりあいが始まる。

あたしはついに切れた。

「馬鹿やってんじゃないわよっ。復活だかなんだかしらないけど紗夜を傷つけたら一生恨んでやる。紗夜も紗夜だよ。なんでこんな性質の悪いのを心の中に入れたのよっ。追い出しなさい。今すぐにでもっ。紗夜にはもういろんな人がいるんだからこんな馬鹿馬鹿しい奴と付き合う必要ないでしょっ」

がっとナイフをとりあげて空いた片手で紗夜の頬をひっぱたく。

「いくら親友でもあたしも怒るときは怒るんだからねっ。いつまでもぐじぐじしてないであたしやみんなの気持ちを考えなさいよっ。みんな紗夜の味方なんだから。心無いことをいう人のことまで責任は持てないけど少なくともあたしたちは紗夜を大事に思っている。壁をつくってないで出てきなさいっ。これ以上壁を作ったら承知しないからねっ」

あたしのたんかに彼女は、いや、紗夜は目を丸くする。

「さっさとその悪魔やろーを押し出して」

晴美、と紗夜はあたしを見た。その頬には涙がひとすじ流れていた。そっとハンカチでその涙を拭いてあげる。

「晴美!」

正気に戻った紗夜はあたしに抱きついて泣きじゃくり始めた。

その紗夜の体の中から嫌な気配のする煙のようなものが出て行くのがわかった。

紗夜の体からあの悪魔が出ていったんだ。ほっとする。

でもこれからがシュリたちの出番。

「縛」

レイさんがすかさずその嫌な気配を捉えた。ってあたしにはわからないけど。

「天上界の命によりその魂を捕らえる」

シュリは小さな水晶球のようなものを持ち出して掲げた。

その水晶球がみるみる黒くなっていく。

そして、あたしと紗夜は断末魔の声を確かに聞いたのだった。

しばらくあたしと紗夜は呆然と座り込んでいる。

仕事は終わった、と一人ごとを言ってシュリがきびすを返す。

えっ?えっ?

「行方不明の人は?」

あたしは紗夜を支えながらシュリに聞く。

「衰弱しているが大丈夫だろう。あとは警察にでも頼めばいい。彼女を犯人にしたいというなら別だが?」

ちろん、とシュリがこちらを見る。

いいえっ。そんなつもりは毛頭もありませんっ。

ひたすら恐縮していると紗夜がくすくす笑い始める。

「晴美の・・・」

わーっ。それは言わないでーっ。

あわてて紗夜の口を押さえる。

もごもごいいっているがばらされるよりかはましだっ。

「紗夜、絶対に言わないでよ? でなきゃ手を離さないからね」

あたしが言うと紗夜はこくこくうなずく。

あたしは安心して手を離したのだった。

かくしてあたしが始めて立ち会った事件は初めて終わったのであった。

あー、疲れた。

 

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