Alice in the sky 〜躁鬱と創作と時々朱印〜

日月水でやってきましたがなかなか更新できず今後不定期となります。申し訳ありませんがよろしくおねがいします。長年統合失調症と思ってましたが今日躁鬱病と訂正入りました。改めて心の病持ちでよろしくお願いします。
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# 時空を越えて2 遅れてきた花嫁後編

JUGEMテーマ:ファンタジー恋愛もの

 

 

 

 

「ふぅ」

 と未沙はため息をついた。

クリスとの楽しい成長の勉強は滞りなく終わり、若い男性のもとに一人いるのはいけないとクリスはこの家を未沙に与えた。その時にふっとよこぎったさびしげな色に気がかりではあったが。

 

 そして今日、関係者を集めてガーデンパーティをするのだ。

 シャーロック夫妻にワトソン博士。そしてマイクロフト。限られた人数だがこれが未沙が知っている全世界での人間だった。

 

 はじめにチャイムを鳴らしたのは夫妻だった。もうアミィは妊娠している。来年の春には生まれるという。よくその身で敵の前に出ていけてものだ。うっすらと覚えているモリアーティという人物とみんなの顔。そして必死に名を呼んでくれたクリス。

悪い記憶だが未沙にはとてもいい思い出になっていた。今一人で暮らしてると特にそう思う。クリスがそばにいてくれたらと。

「あら。頭痛がするわね。薬でも飲んでおこう」

 ラブラブなシャーロック夫妻をほおっておいて未沙は薬棚にいって頭痛の薬をぽんとほうりこんだ。

「なにを飲んでいるんだい?」

「きゃっ。水がこぼれるじゃないの。クリス」

 こういう悪がきのようなことをするのは大抵クリスだ。ぬいぐるみ投げ合戦も今ではいい思い出だ。

「頭痛薬よ。最近ときどきあるのよね」

「君の体質ではないはずなんだが」

「未知なるものがひそんでるのよ。たぶん」

 そう言って未沙は一笑に付すとガーデンパーティの準備にまたとりかかった。

「クリスも手伝ってよ」

「あ・・・ああ」

 なんだか緊張した面持ちでクリスは一緒にテーブルの料理を運び出した。クリスが緊張するのも無理はない。ポケットの中には婚約指輪が入っているのだから。いつわたそうかと時期を狙っているのにその時期がない。いっそ別れるときに求婚しておけばよかっと思う。だが、一度は一人で外の世界を見る必要がある。だから求婚は延び延びになっていた。

やがて遅刻魔のワトソン博士が登場すると楽しいパーティが始まった。

おいしい料理に楽しい音楽。そして私の双子の姉。アミィ。自分がコピーだと知らされても驚かなかった。目の前にオリジナルがいたのだから。それも自分の身を守るために身を呈してくれた。他人だとは思えなかった。

「もっと早く知り合えていたらよかったのにね」

 アミィがいう。

「ええ。本当に。助けてもらってもう自分と違う人ででもお姉さんだとはすぐにわかったわ」

「不出来な姉でごめんね」

「なにを言ってるの? あんなふうに身を守ってくれた姉さん・・・お姉さんと呼んでいいかしら」

 恥ずかしそうにアミィの意見を未沙は聞いてくる。

「ありたりまえじゃないの。アミィと呼んでもいいのよ。双子なんだから。ほら。呼んでみて」

「あ・・アミィ」

 消え入るような声で未沙は呼ぶ。

「もう。じれったいわね。もうちょっと大きな声で呼んでみてよ」

「こらこら。未沙は君と違って繊細なんだから強要はだめだ」

 シャーロックが間に入ってくる。未沙はその会話の中に入れてうれしかった。

いずれ、私はここをでていく。まだ入ったばかりの家。でも病人にはここはうるさすぎた。

「うちの未沙をいじめないでください」

 そこへクリスが強引に入ってくる。どうやらアミィたちとの接点はあまり残したくないらしい。

「何言ってるの。クリス。私はお姉さんができてとっても嬉しいんだから」

「だからアミィと・・・・」

「アミィ」

「クリス!」

「美沙!」

 

 思い思いの名前が飛び出す。それを悠々自適に見るワトソン博士とマイクロフトである。

「何かこげてないか?」

 ワトソン博士がふっという。

 ぎゃーと未沙は言って台所へ走る。

「メインのシチューが焦げちゃった・・・・」

 しゅんとなっている未沙にアミィが肩を叩いてはげます。

「きれいなクイーンね。きっとクリスは大変な思いであなたを育てたのね。私、あなたにあえてよかった。機械にはいっているあなたをみたときまさか生きているあなたと出会えるなんて思えなかった」

 嬉しそうに言うアミィに未沙は涙ぐんで喜ぶ。

「私もあなた・・・いえアミィに出会えてよかった。たった二人の家族だもの。ってあら、やだ、アミィの赤ちゃんもシャーロックも家族なの?」

 目を丸くして未沙は驚く。

「そうよ。これから生まれてくるあかちゃんもみんなあなたの家族。一人ではないことを絶対覚えていてね」

 うん、うん、と未沙はうなずく。そこへ第二弾の焦げたにおいがする。

「アミィ! こっちも焦げた!! 手伝って」

「ほい来た」

 妊娠してから強くなった我が妻を見てシャーロックはため息をつく。

「昔はもう少し繊細だっだんだが妊娠してからころりと性格が百八十度変わってねぇ。君も実感するよ」

「シャーロック。それは今まだ秘密にしておいてくださいよ」

 シャーロックはにひひと格好に似合わない、まるでアニメのキャラクターのごとく笑うと悠々とテーブルのほうに方向転換した。

 

パーティは夜遅くまで続いたがさすがに妊婦の身には悪かろうとシャーロックが強引にアミィを連れて帰ってしまった。わからぬものではないがもう少し話したかった。最後の逢瀬としては。しかしそれは誰も知らない。今から始まる夢のパーティだと思っていたから。いや、マイクロフトだけはしっていた。あの頭痛のもとを。

 

パーティの片づけをしながら走馬灯のように自分の人生を思い出していた。自分の人生はほんの一年足らず。生まれた時からいたクリスと一緒にいて、やっと思考もしぐさも言葉も大人になったかと思ったらこの家に住んでいた。ここはいい。自然の中でのびのびできる。犯罪の温床の都会から離れて。だが、もう限界だ。クリスは気づいただろうか。あの頭痛薬のことを。一番強烈に効くものだ。

 明日一番でコテージに行こう。マイクロフトが用意してくれたコテージに・・・。

 

 コテージに行って数週間は何事もなくすごせた。頭はだんだん割れるように痛むが薬を飲むと治まる。在宅療養にはうってつけだ。コテージはレトロな感じで何か懐かしさを覚えた。ここが終の住処になるということを考えるとさみしい気がしたが。それでも一人で終わろうと決めていた。クリスやナタリーを悲しませたくなかった。こんな恐ろしい事実を知ればわがことのように悩み苦しむだろう。それはいやだった。一番大事な人にそんな思いをさせたくなかった。

 こんこん、とドアをたたく音がした。一応は形だけあるのぞき窓を見るとそこにはクリスがいた。恐怖で身が縮む。

「未沙!! ここにいるのはわかっているんだ。出て来い。そうでないとこちらから動くぞ!!」

 クリスはやる男だ。どんな手段を使っても入ってくる気だ。

 しかたなく未沙はドアをあけた。

 クリスはドアが開いたときに目に飛び込んできた未沙のやつれ具合に驚いた。だが、次の瞬間にはもう胸の中に引き込んでいた。

「馬鹿。未沙。一人でこんなところに・・・」

 未沙はこの人のぬくもりに甘えたかった。だが、それはしてはいけない。震える腕でクリスの胸を押しだしていた。

「お茶をさしあげるから、それで帰ってくださらない?」

 クリスは首をかしげた。彼女はそんな上品な言葉を使わない。教えてもまったく身に付かなかったのだから。

 それに気がかりなことがある。来院記録があるのにカルテが抜かれていた。極秘扱いだった。一介の小児科医には見ることはできなかった。マイクロフトに申し立てるとこのコテージのカギと地図をもらったのだった。

「っ・・・・」

 未沙はどこか痛むように顔をしかめた。

「どうした。どこか痛むのか?」

「ちょっとね。薬を飲むからお茶を待ってくださらない?」

 そう言って未沙が取り出した瓶をみてクリスはとっさにそれをとりあげて薬の構成物質を見て判断していた。

「どうしてこんな強烈なものを飲むんだ? もしかして・・・・」

 クリスの中で恐怖の答えが出つつあった。

「そのもしかしてよ。ここにできちゃったの」

 とんとんと頭の中を指し示す。脳腫瘍だった。

「だからもうみんなのところへは帰れない・・・。だって弱っていく私を見て誰がうれしいの? しにゆく私を見てアミィが泣かないとでもいうの? 彼女の赤ちゃんまで悲しませてしまう。だからパーティをしたのよ。みんなの思い出を作るために」

 ぽろぽろと涙をながす未沙にただクリスは抱き寄せてあやすしかなかった。昔よくしたようにぽんぽんと背中をたたくしか。いくらか時間がかかっただろうか。不意にクリスは声を発した。

「決めた。今から結婚しよう」

 涙でぐちょぐちょだった未沙の顔が何を考えているんだろうかという顔になる。狂気のさたとでも思わんばかりに。

「そう。君のガンは必ず私が治す。以前研究していていいところまで行った。研究費が莫大でままならなかったが、今度はポケットマネーでもやってやるさ。未沙を死なせはしない。この私が守る。だからまず結婚しよう。前から求婚しようと思っていた。今、婚約指輪を持っている。これで今は我慢してくれないかな?」

 そう言ってポケットから指輪の箱を取り出すとやせ細った未沙の指にはめた。

「ぶかぶかだわ」

「すぐに元に戻るよ。健康的な食生活を送ればこんなにやせなかったはずだ。さぼったな。料理を」

 そう言ってクリスは未沙の鼻先をちょんとつつく。

「だって。食糧持ち込むのも面倒だし、作るのも面白くないし。一人はつまらないし・・・」

「よし。それなら我が家のコテージを提供しよう。ここはマイクロフトの家だから、かってに実験もできない」

 そう言ってクリスは未沙を抱き上げるとコテージを出る。

「クリス。私、荷物もあるけど」

「そんなもの、あとから取りに行けばいいだろう。うちのコテージは遠いからね。今のうちに行こう」

「いつからクリスはこんなに強引になったの? ジェントルマンが自慢だったのに」

「アミィから教えてもらったのさ。亭主関白というやつを」

「なに、それ?」

 同じく知識は貧弱な未沙が尋ねる。

「夫が妻よりも強い力を持つっていうことだ」

「まぁ、なんてこと!」

「でも君たちの故郷の言葉だそうだよ。なかなか素敵な国だね。日本も」

「私にはわからないわ。日本とかイギリスとか・・・」

「行けばわかるよ。いつか、ね。と逃亡はなしだよ。君の身の回りの物を取ってくる」

 クリスはそういって車の後部座席に座らせた。

「クリス!みんなの写真だけは持ってきてね!!」

 未沙の顔には未来への希望の証の笑顔が戻っていた。それをみてクリスは手をふって答える。

 

クリスのコテージにはすでに家政婦ナタリーがいた。クリスは未沙を連れていく間にあっという間に根を回してしまったらしい。恐れ入る旦那様だ。

「まぁ。じょうちゃま!こんなにやせ細って。今から元気の出るお食事を作りますからね。ベッドでゆっくりしてくださいませ。

「ナタリー」

未沙はいつもとかわらないナタリーの姿に涙ぐんだ。だが再会のよろこびもつかの間クリスによってあっという間に抱きかかえられてベッドに連れて行った。シングルの質素なベッドだった。

「味気ないベッドで申し訳ない。ナタリーがそのうち改装してくれるよ」

 日曜大工までしているナタリーのコミカルな動きを想像して思わず未沙はくすりと笑った。

「何がそんなにおかしいんだい?」

クリスのきらきらした瞳が未沙を覗き込む。

「日曜大工するナタリーって笑えない?」

 家政婦がえっちらおっちら釘やらのこぎりやら振り回しているのは面妖なシーンだ。

クリスは大声で笑う。

「それは傑作だ。君のイマジネーションは大したものだ」

「そんなにおおげさなものじゃないわ」

「ぼっちゃま! 嬢ちゃまを早くベッドにいれてくださいまし。料理がさめてしまいます!!」

ぷんぷん怒ってナタリーがクリスをせかす。相変わらずの構図だ。

「わかったよ。我らが姫君にここでゆっくりしてもらおう。私はこれから研究に向かうから」

「え?もう?」

ついさっきマイクロフトのコテージにいてここに移ったばかりなのに疲れないのだろうか?

 しかし美沙の心配をさっしたのかクリスは美沙の鼻をちょんとつついて言う。

「心配ない。私だって寝たり食べたりする。大丈夫だ」

 しかしクリスは研究者肌だ。一度はまるととことんまでいく。まるで美沙を育て上げたときのように。

「美沙。はやくナタリーの料理で元気になってくれ」

そういって美沙にかるくキスをするとクリスは部屋を出て行った。

「まぁ。坊ちゃまも人の悪いこと。人前でキスをするなんて」

 もはや世界の破滅かといわんばかりのナタリーに美沙はくすりと笑う。そして手の甲をみせる。

「見て。私とクリスは婚約したの。キス一つじゃすまないかもね」

軽々と言ってのける美沙にナタリーはまぁと声をが上げるとベッド専用のテーブルに料理を置き始めた。それから数週間してナタリーのかいがいしい世話で美沙の青白い頬がバラ色そまった。体力もほぼ戻っている。鎮痛剤を打っているがコテージの外で日光浴をあびて散歩するぐらいには元気になっていた。しかしクリスの研究は一向に進まなかった。連夜徹夜することもあった。ナタリーがついに美沙に泣きついた。

「サンドイッチすら手にとってくださらないんですよ。嬢ちゃまからしかりつけてくださいまし」

「クリスは寝ていないの?」

 美沙の表情が曇る。

「寝る寝ると言っては朝方すこし寝るだけです」

「わかった。クリスのベッドはダブル?」

 どういう質問かわからないがナタリーは聞かれるままに答えた。

 美沙はにやりと笑うとナタリーにそっと耳打ち始めた。

一方、何も知らないクリスは三日目の朝方に自室のドアを開けた。そこにはすやすやと眠る美沙がいた。クリスはぎょっとする。

「美沙。ベッドが違う。寝ぼけたのか?」

以外にも動揺してクリスは声をかけた。

ぱち。と美沙は眼を開けた。確信犯である。

「私がいると思えば、徹夜なんてできないと思ったのよ。それなのにあなたは三日も戻ってこないなんて」

うっすらと美沙の涙がまぶたにうかぶ。あわててクリスは頭を下げる。

「これからは愛する婚約者のいるベッドにもどらないことはないわね?」

 ちろんと美沙がみるがクリスには痛い問題である。彼とて成人男性である。万が一体力のない美沙を・・・。

「わかった。毎日眠るから自分のベッドにもどってくれ。」

お手上げだというばかりにクリスが言う。

「この目で確信できない限りはだめです」

 きっぱりと美沙は言う。

「だめなんだ。君がいると心が乱れる。よからぬことを考えてしまうんだ。私だって聖人君子じゃないんだから」

「そこまで言うなら」

 確かに成人男性だ。クリスは。しぶしぶ美沙は立ち上がる。クリスがあわてて抱きあが下ようとする前にしっかりと美沙は地に足をつけていた。その回復ぶりに目を細めてクリスは喜ぶ。

「美沙。もう少しで完成だ。待っていてくれ」

 クリスがふわりと美沙を抱きしめる。うん、と美沙はなきそうな気持で首を縦に振った。

半年の命といわれていた美沙だがなんとか命をつなぎとめていた。ときおり眠りこむときもあったが。そんな美沙の部屋にクリスが飛び込んできた。

「美沙。薬が完成した。すぐにでも入院して投与を始めるぞ」

「クリス。おめでとう。あとは私の体さんに頑張ってもらわないとね」

入院して美沙に臨床検査として投与が始まった。他の患者もそうだった。薬の力は偉大だった。初期患者がみるみる回復していく。美沙のように末期にはなかなか効果が表れなかったが。実際は成功はゼロだった。激しい副作用が美沙に襲う。吐き気。脱毛。痛み、ありとあらゆる症状に美沙は耐えた。時間がたりなかったのか。クリスに絶望を襲う。

もっと早く完成していたらと。しかし無情にも時間はすぎていく。

 そしてある日を境に美沙はこん睡状態に陥った。クリスは何もかも放り出してつきっきりで看病した。管があちこちにさされ痛々しい姿を美沙はしていた。

「美沙目をあけてくれ。私をこのまま置いていかないでくれ」

 クリスの涙がぽとりと美沙の手におちた。それが合図のように美沙は瞼をあけた。か細い声でクリスに訴える。

「クリス。わからないけど川の向こうにお父さんとお母さんがいたわ。クローンの私にも。一歩進むごとに痛みが消えてあるいていたけどあかたの泣く声が聞こえてきてあわてて戻ってきたの。これから私が意識を失っても薬の投与はやめないで。最後まであなたの希望をうしないたくないの。」

美沙といったかぎり彼女の胸にうつぶせてクリスは肩を震わせていた。美沙はこの管の付いている手がうごかせたら背中をやさしくたたいてあげるのにと悔しく思いながら言った。

「クリス。私のいるところはあなたのいる空の下よ」

 美沙と涙声だけがその部屋にだけ落ちた。

未沙はある朝起きると突然いつも悩ませる頭痛がないことに気づいた。鎮痛剤が効いたかとおもっていたが妙な感じがする。

「クリス!頭痛がない。すぐ来て!」

 ナースコールで恋人を呼び出す自分も馬鹿だと思いながらも未沙は興奮を抑えることはできなかった。

 髪の毛はすべて抜け、いったんはこん睡状態になりながらもこの世界に戻ってきた未沙には強さが実っていた。

「本当か?頭痛がしないというのは?」

 飛んできたクリスも驚きながら聞く。薬が出来上がるまで半年。ほととんど眠らず作った。その薬は他の患者にはよく効いたが末期患者の未沙には効かなかった。激しい副作用に苦しむ未沙をみて自分勝手な行動で苦しめているのではないかと思ったクリスは投与をやめることも考えた。だが、未沙はあきらめなかった。さっそく脳の腫瘍の具合を調べることになった。

「つるぴかになってたすかったわね」

 そんなジョークを飛ばす未沙をクリスは抱きしめたくなった。一緒にいる時間が長ければ長いほどクリスは未沙を愛するようになっていた。子供ではなく一人の女性として。未沙もそうだといいが。

 検査結果はまさに未沙が言っているようになにも「なかった」。末期患者の生還率は〇に等しいのに。

「クリス! すごいわ。これで結果データーが新しくなるわ!!」

 未沙は自分の命が助かったことを忘れてクリスのことを気にかけた。

「そうだよ。そして君は私の花嫁になるわけだ」

「えっ・・・」

 未沙の顔が赤くなる。照れているようだ。

「いやかい? トップシークレットとして扱っていっているのでも情がわいたからでもない。君を愛している、から」

 未沙のなんの表情もない瞳から涙が流れた。嗚咽をこらえていたがそれもこらえきれず、わっと泣き出した。

「どうした。未沙?!」

 おろおろとクリスはうろたえるばかり。

「馬鹿。クリスの。嬉しくて泣いてるのよ!! なにもこんなところで言わないでもいいじゃない。私がいついやだって言ったのよ!?」

 病院のど真ん中で愛はなんちゃらとやっているのだからそりゃ未沙でなくても恥ずかしいわけである。

「それじゃ、結婚してくれるのかい?」

「あたりまえでしょう。一番好きな人から婚約指輪もらって突っ返す馬鹿がどこにいるのよ!」

「未沙」

 細く折れそうな体をクリスは抱きしめる。花の香りがして未沙はもう子供ではないのだと思い当たる。

「だーっ。クリス。人がいる。人がっ」

 昔のように言葉使いは子供と化しているがそれは照れているのだとクリスには手に取るようにわかる。

「それでは。次は結婚式だな。どこがいいか? 今ならマイクロフトが祝いにどこでもおさえてくれるぞ」

「クリスの馬鹿」

 未沙は小さくつぶやく。ん、とクリスが気を向ける。

「だれがつるぴかで式を挙げたいもんですか。せめて髪が肩まで伸びるまでは式を延期しますからね」

「未沙〜〜〜〜〜」

 医学賞の受賞もまちがいなしの完璧なジェントルマンが困っているのをみると未沙はおかしくなってしまう。くすくすと笑う。

「大丈夫ですよ。指輪はしっかりもらいます」

 未沙は左手を差し出す。

「未沙、強くなったんじゃないか?」

 いつのまに対等に渡り合えるようになったのか。あーうとしか言えなかったこの「子」が・・・。

「さぁてね。これから一仕事待ってますもの」

 クリスは未沙の左手の薬指を差し出す。クリスはそっと結婚指輪を通す。号数はつい先頃合わせたかのようにぴったりだった。心からの笑みが未沙からこぼれる。輝かんばかりでクリスは見惚れてしまう。

「で、一仕事って?」

 興味深げにクリスが問う。

「あら。子供じゃないの。あなたの後継者になる子をたくさん産まないといけないだからね。覚悟してよ」

 ちろん、とみられてクリスは一瞬蛇に睨まれたかと思った。シャーロックしかり、クリスしかり、奥方にはてんで弱いようである。

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