Alice in the sky 〜躁鬱と創作と時々朱印〜

日月水でやってきましたがなかなか更新できず今後不定期となります。申し訳ありませんがよろしくおねがいします。長年統合失調症と思ってましたが今日躁鬱病と訂正入りました。改めて心の病持ちでよろしくお願いします。
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第五章 宴からまた旅へ(執筆途中ですが最新版です)

 

村に宴が始まる。紫夜は今宵の主役だ。村人の中に混じって宴を楽しんでいる。一方、流花は眠っていた。いや、眠っているというか疲れて横になっていた。外に一瞬出ようかと思ったが、つらくていけなかった。血の惨劇が脳裏によみがえる。

 

炎。

血。

煙。

 

 幼きころの記憶があふれていた。優しい顔をした母、そして父。そしてもう一人自分とそっくりな顔をした幼子。弟、だ。だが、名前は思い出せない。両親の顔をもおぼろげだ。感じ、がわかるだけだ。血の惨劇のショックが強いせいで記憶があいまいなのだ。一人、暗い部屋の中にいると怖くなってくる。紫夜に会いたかった。なき続けた流花を紫夜は優しく背中をなでていてくれた。彼の本当の優しさに触れた気がしていた。もう一度あの優しさが欲しかった。

 彼に会いたい。彼も同じ想いをしただろうか。彼は血の惨劇を見なかったのだろうか。そんなそぶりは見せなかった。そういえば裏皇家虐殺の言葉を聞いたが表皇家ではどうなったんだろう。紫夜は何者? 何のために三種の神器を集めているの? 流花の中で疑問がわきあがった。

 三種の神器は天皇となる人物のそばにあるという。こちらの世界でもそうなのだろうか。急に思い出したこの世界の情報に流花は振り回されていた。

 もし、紫夜が表皇家で裏皇家の件にかかわっていたら? 彼は敵?

 思いたくない。

 とっさに流花は思った。優しい紫夜。ぶっきらぼうな紫夜。横柄なところもあるけどそれが流花が見た紫夜だった。人間くさいところを持ったのが紫夜というのを認めないわけにはいかなかった。そんな紫夜が私たちの敵? 考えたくなかった。彼だって当時は子供だったのだから何かをしたわけではないのだ。そう思って安心すると流花はまぶたを閉じた。ひたひたと安心感がやってくる。紫夜の顔を思い出すとほっとしてきた。今では外の宴も怖くなかった。紫夜が外にいるのだ。彼のいるところでは何もおこらない。安心ていい。流花はゆっくりと眠りに落ちていった。

 

「んんっー。よく寝た。今日も元気だいい子の流花ちゃん」

 翌朝、琉花はがばっと起き上がると両ほほをたたいた。気合を入れるためだ。

「いったーい!!」

 涙目になっているところに紫夜が入ってきた。

「何をしているのだ?」

 人を小馬鹿にしたような表情に流花はむっとする。こんな奴に会いたかっただなんて口が裂けても言わない。

「気合よ。気合。気合を入れていただけよ」

 ふん、とそっぽを向きながら流花は言う。

「別に入れなくてもいい」

 紫夜はそういうと流花の寝所の端に腰掛けた。

「ちょっとーっ。乙女のベッドに何するのよっ」

「ベッド?」

 紫夜が問い返す。

「寝るところよ。寝るところ。乙女のプライベート空間よ!!」

「プライベート? お前はいつもわけのわからないことを言う」

 紫夜が困ったものだとと流花を見る。

「へーい。どうせあたしは馬鹿ですよー。で、最初に戻るけど何もしなくいいって?」

「私もしばらくゆっくりすることにした。ここのところ強行軍だったからな。娘役を無事こなした褒美だ」

 偉そうに紫夜は言うの聞いて流花は顔をしかめる。

「やーよ。あんたからほうびもらうつもりはないかららね。さー、次は勾玉かな? 鏡かな?」

 るんるんと流花がいそいそとしはじめると紫夜が眉をひそめた。

「気にならないのか?」

「気になるって?」

「昨日のことや私のことなど。大方疑念はわいているのではないか?」

 そーねぇ、と流花はのんびりと声を出す。

「例えば、あんたが何者か? 何故三種の神器を必要といているのか? あとはそーねぇ」

 流花はにやりと見て紫夜は思わずぐっとつまった。

「奥さんにしたい女性が見つかって逗留を長くしたくなったのかしら?とか?」

「たわけ!」

 紫夜がいきなり怒鳴る・

「大真面目に聞いていればっ!」

「あらら。昨日は楽しかったんでしょ? 一人二人の女性と・・・」

「るかっ」

 今度こそ手当たり次第に物が飛んできそうな形相に流花は笑う。

「疑問はあるわよ。たくさん。でもあんたははなしてくれない。一人心に背負ったまま一人でこなそうとする。普通は聞きたがるし、あたしも聞きたい。でも・・・」

 流花はそこで一息ついた。

「でも?」

「その内わかるでしょ? あたしが記憶を取り戻したかのようにあたしだって自分が誰だって思い出してもまだ実感は沸かない。あたしは佐々木流花。3年ぽっちこの世界にいたってあとの13年間の思い出のほうが重いわ。今、疑問を聞き出してもそういう風にしか思えないの」

 流花はそう明るく言って起き上がった。

「休めってことは何か食べさせてくれるんでしょ? おなかすいたー。食べ物ちょーだい」

 にこっと流花が輝かんばかりの笑顔を紫夜に見せた。そのはじめてみた笑顔に紫夜は罪悪感を覚えた。そして守ってやりたいと思った。流花の立場は危うい。現政権は太政大臣が取り仕切っている。裏皇家の生き残り水流を天皇として・・・。

 表皇家、裏皇家とあった二重構造はいまや破壊されている。天皇と呼ばれる新しい君主が国を治めている。実際は大政大臣の傀儡政権だというのは周知の事実だが。完全に政権をとられる前に紫夜は表皇家の生き残りとして政権奪取するつもりだった。その手ごまに流花を利用していた。「していた」、である。翁の家でともに暮らし、旅をして紫夜の流花への想いは変わっていった。必ずとはいえないが流花の今の家族の下に戻してやりたいと思うようになっていた。血なまぐさい話は流花には似合わない。打算と親切心が紫夜の中でせめぎあった。

「長老に朝食の用意を頼んでこよう」

 紫夜は心を押し隠して部屋を出て行った。

 

 はぁ〜〜〜!

 

紫夜が出て行って同時に流花はため息をついた。聞きたいことは山ほどあると言った。実際はうずうずしている。だが、その心のどこかでまだ話をしたくないという思いもした。紫夜との関係が一気に崩れる気がして怖かった。

 今も緊張している。明るく振りまいたのは空元気だ。空元気も元気のうちとがんばった。紫夜一人に苦しい思いはさせたくなかった。いっそカウンセリングの似たようなことをして楽にさせてあげるべきかもしれない。しかし今の流花にその度量はなかった。自分のことで精一杯だった。血なまぐさい記憶。培われていった元の世界での記憶。二つがせめぎあって流花の心は壊れそうだった。みきりをつけるべきなのかもしれない。自分はまさしく裏皇家皇女火琉なのだから。

だが、身分がわかったところで、力があるとわかったところでなんになろう? これで元の世界には帰ることはできないのだから。このまま紫夜についていくしかない。進んでもわからない世界が広がり逃げたところでなにもできない。ならば進むしかない。手がかりをもとめて。

自分とは何か。元の世界に帰れるのか。こっちに残るのか。追求すべきことはいくらでもある。紫夜には紫夜の考えがあろう。今はそれを信じるしかない。

 うーっとうなりながら寝所に横になるとすっと盆が差し出された。村娘が持ってきてくれたようだ。

「ありがとう」

 しかめっつらは紫夜のためにだけある。別に親切な人にしかめっつらをする必要はない。にこっと笑って盆を受け取った。少女ははにかんだ笑顔を浮かべるとすぐに立ち去った。

「面白くないなぁ」

 小さくつぶやいてるかははしをすすめた。翁のはしが懐かしい。外へ行ってみたい。だが、ことのほか体は重い。ころん、と食べるだけ食べて寝転ぶ。流花はまた眠りに引き込まれていった。

 

薄もやの中を流花は歩いていた。

 

ここはどこ? また異世界?

流花はおろおろした。

紫夜は?

あたりを見回すが紫夜はいない。誰一人としてない。恐怖がこみあげる。

 

“安心なさい”

 

 きれいな旋律のような声が降ってきた。

 

“あなたを呼んだのは私です”

「あなたは誰?」

 警戒心からきつい声で問い返す。

“わたくしはヤマトヒメ。あなたに火の勾玉を授けるために呼びました”

「火の・・・勾玉・・・?  三種の神器?」

“そう。あなたの勾玉です。火を操る裏皇家皇女火琉”

「私はっ・・・!」

 流花が反射的に反論しようとしたのをヤマトヒメはとめる。そのしぐさすら優雅な白鳥のようだ。

“別の世界に行っていたのも知っています。でもあなたは勾玉を手にせねばなりません。正しきものが正しき扱いを行うために。今、鏡はあなたの弟の双子の弟が持っています。邪心にさらされた神器は世を崩壊させます。それを阻止できるのは紫夜とあなた二人なのです。二人で探しなさい。勾玉を。私は近江、美濃、伊勢とめぐりました。御三雲をたずねなさい。そこで勾玉はあなたを待っています”

ヤマトヒメの体の線がすうぅっと消え始めた。

「待って! どうして私なの?!」

“幸運を祈っています”

ヤマトヒメの体は黄金色に混じって消えてしまった。

 

薄もやの中に流花は一人取り残された。孤独感がつのる。見つけてどうするのよ。集めたら帰れるわけではないの? 

 

“流花”

 

 遠いところから懐かしい声が聞こえる。流花ははっと振り向いた。薄もやが消えていく。

 

まぶたを開けるとそこには紫夜の顔がどアップであった。

「はろー。紫夜。どーしたの?」

 夢と現の間をさまよう流花はのんびりと話しかけた。

「はろ?」

「こんにちはってい・・・いや〜。乙女の寝所にっ」

 流花はずささっと壁際に逃げた。が、体がくたっとする。

「熱を出したんだ。無理させたからだろう」

 また眉間にしわを寄せて苦しげな顔をする紫夜に流花はにたり、と笑った。紫夜はぞっとする。

「やぁね。何もしないわよ。それよりも勾玉の場所知りたくない?」

「勾玉?」

 紫夜がはっとする。

「さっきねー。ヤマトヒメに会ったのよ。御三雲にあるって言っていたよ〜」

「神託か?」

「さぁね。ただの夢かそうでないかは紫夜が考えることよ。さぁ。乙女のプライバシーを返して」

「プラ・・・プラ」

「プライバシー」

 流花が言い直す。

「何でもいい。お前の言うことはよくわからない。ただまずは体を直せ。体を壊せば御三雲にもいけなくなる」

「信じるの?」

「一応、はな。仮にも皇女だ。間違いはないだろう」

「人を気軽に信じると痛い目にあうわよ」

「とするとお前はうそを言ったのか?」

「なわけないでしょっー!!」

 ちょっと親切心を出せばこれなんだもの。

 流花がぷぅっと頬を膨らませる。その頬を紫夜はつつく。

「休め。とりあえずはそれが必要だ」

 紫夜は軽々と流花を抱き上げて寝所に横たわらせる。あたふたする流花を面白そうに眺める。

 そして横たえると額にぬれた布を置く。

「気持ちいー」

「つべこべ言わず寝ろ」

「はーい」

 流花は熱があるせいなのか打ち解けた様子で返事をすると寝所の衣に包まってすーすー眠りだした。額から布がずり落ちる。

「仕方のない奴だ」

 紫夜の口角がほんの少し上がる。次の目的地は御三雲か。ゆっくりいこう。わがまま姫と。

 流花の打ち解けた心地よい声に紫夜は癒されていた。このままこうしていたい。紫夜は流花を大事な人間だと思い始めていた。流花も紫夜のことを頼りがいのある相手として。それが恋となるか愛となるかはこれから次第。二人の旅はまだ始まったばかりだった。

 

| 燎原の炎 | 00:11 | comments(0) | - |

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