Alice in the sky 〜躁鬱と創作と時々朱印〜

日月水でやってきましたがなかなか更新できず今後不定期となります。申し訳ありませんがよろしくおねがいします。長年統合失調症と思ってましたが今日躁鬱病と訂正入りました。改めて心の病持ちでよろしくお願いします。
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# 銀のしずく 金のかがやき番外編 氷と炎のクリスタル

 

 

 ダグラスは建物の陰に隠れて様子を見ていた。そこへキースが忍び込んでくる。

「おい。見つかったらどうするんだ」

 小声でしかし厳しい声でダグラスは言った。

「かまいやしないさ。マリアンナが引きつけてくれている」

 マリアンナとは仲間の一人。名前から想像するような豊満な体つきではない。だが、スレンダーなその体から発せられる女性独特の秋波には誰もがころっといってしまうのである。マリアンナは男にしなだれかけ、男は酒のせいもあってかいいようにされている。

 ダグラスは苦笑を禁じ得ない。最初に出会ったときもその男と同様だった。だが、すぐに気を取り戻しお宝はダグラスの手に入った。そのいきさつもあってマリアンナはダグラスには頭が下がらなかった。

 ここは城の内部。今日は主の趣向でどんな人間でも食卓に着けることになっていた。そのおかげで彼らはまんまと中にはいれたのだ。だが、敷き詰められた干し草が音を立てるのでそうそう目立った行動はできない。

 ダグラスはキースに後ろを見張らせながら内部へと進んでいった。

「ここだ」

 事前に場所を調べていたダグラスが言う。気持ちが高揚してくる。何度やってもお宝をねらって手にするときはスリルを感じる。

 その横にキース立つ。これからは彼の出番だ。細長い金属棒を持ち出してなにやらかちゃかちゃしはじめる。ものの数分も経たないうちに扉の鍵が開いた。

 中へ進んでいく。一番奥に重厚な木箱がある。割って中身をとりだしたいところだが、音を聞きつけて誰かがきてもいけない。またキースが鍵をあけようとした。こちらはさすがに大変らしく簡単にはいかない。さすがはサマーヴィルの領主が守っている宝だ。それを今から盗む。盗んでどうするかなどとは考えない。自分のものにする場合もあるし、闇ルートに流す場合もある。キースとマリアンナにはちゃんと礼金を払う。しっかりここまでしておけば間違いはないだろう。妙な自信がダグラスにはあった。

 かちゃり、鍵がはずれた。

 キースは頭であるダグラスにそのあける瞬間を譲った。いいように扱われているようだが、それは違う。キースはけがをして命からがら逃げてきたところをダグラスに救われたのだ。命の恩人の温情をむげにするほどキースはいかれていなかった。

「あ」

 子供の声が急にした。しまったと、ダグラスは思いながらも子供の口をふさいだ。

「キース、早くそれを」

「おじいちゃまの宝物とってどうするのさ」

 もぐもぐと言っている内容はそういうことらしい。

「痛っ」

 ダグラスはかまれた右手に手をやる。

「この・・・」

 ダグラスは固まった。

「おじいちゃまっ」

 少年が年老いた領主に抱きつく。マリアンナも一緒だ。

「ひどーいっ。あたしも一緒にとるって約束でしょう?」

「領主と一緒に来るおまえは何なんだ?」

 キースが反撃する。

「だってー。領主様がみてもいいっていってくれたんだもん」

 スレンダーな美人のはずなのに声に出すとたんなるそこらの町娘以下の発言になる。このこびた性格を何とかしてほしいとダグラスもキースも思う。

「ほれ、そこの若造。あけてみろ」

 領主はそういって箱を指し示し召した。

 箱に近かったキースが言われてあける。

「いやーん」

 マリアンナの声が聞こえたがキースもダグラスも無視をした。

 とりだすと透明な女神像が手の中にあった。かなり重い。これだけの形をつくるにはそれだけの水晶が必要だ。この女神像にどれほどの価値があるかは人目でわかる。それをわざとあけさせ、手に取らせるつもりとはどういうことなのか、ダグラスは警戒する。

 ふぉふぉふぉ、と領主は笑う。

「それはあたしのよ」

 マリアンナがいきなり突進してきてお宝を奪おうとしてしまう。

「おいっ」

「くるなっ」

 ダグラスとキースの声が重なる。

 が、そんなことでへこたれるくらいならトレジャーハンターにはなれない。マリアンナはそのまま突進した。

 キースの手から女神像は落ちた。

 ゆっくりと時間がたっていくようにその一瞬はただだまってみているしかなかった。もっともその瞬間は非常に短いのであるのが事実である。

 かしゃーん。

 ガラスが割れたような音をだして女神像は壊れた。

「ああー」

 へたりこんでキースが嘆く。

「マリアンナっ」

 厳しい顔をしてダグラスが静かな怒りを示す。本気で怒ったダグラスに勝つものはいない。

「いやいや。まだ気づかないかね。若者たちよ」

 領主はそういうとまた別の引き出しから箱を取り出した。雑な箱である。こんなのに入っていたらここまで苦労しなかったのに。

 ダグラスもキースも思う。が、それは本当だった。領主はそこからもう一体の女神像を出してきた。

「じいさん。女神像はいくつこの部屋にあるんだ?」

 辟易したキースがじいさんよばわりして尋ねる」

「これで二つじゃ。だが、世界にはもっとあるらしい。それをいちいち探すつもりか?」

 おもしろそうに領主は言う。

 貴族の趣味はわからん。

 ダグラスはげんなりして領主をみた。

「そんな大海の中で一つの宝石を探すような無謀なまねをするほど馬鹿じゃない」

 ダグラスは肩をいからせてでて行こうとする。

「待て」

 するどい領主の声にダグラスは止まった。別に叱責しようとかとらえるつもりはないらしい。現に、兵士を連れていきていない。さらに大事になってもよばない。

 こんな甘い状況はただダグラスの心を落胆させた。これではスリルもなにもないではないか。とられて壊されるのを予想されていたなど屈辱のいたみだ。

「俺たちに何か用があるのか? 本物は無事だったんだからいいだろう?」

 ぶっきらぼうにダグラスが言う。そうだ、とキースも便乗する。少しせこいのがキースだったりする。

「実はな・・・この女神像にはいわれがあって。これが本物ということには間違いない。世間に出回っているのは伝説のまねっこじゃな」

「じいさんの戯言聞いている場合じゃないんだが」

 伝説のことならすでに聞いている。氷の女神像の形になったのは悲恋だと言う。その添い遂げられなかった神がモチーフになっていると聞いている。だが、そこに価値はあるというよりか水晶自体に価値があるのだ。ダグラスたちはそういう情報も知っているが別にどうでもいいのだった。

「もう一体、違う神像がある。炎の神像じゃ。この二つがそろったとき大いなる力を発揮できるという」

「それも興味ない」

 吐き捨てるようにしてダグラスはでていこうとした。老人の世迷い言につきあっている時間はない。

「俺たち、別に世界征服願ってこんなことやってないですから」

 キースが補足して言う。

「それはそうだ。だが、報酬を出すと言えばどうする?」

 初めてダグラスは領主の顔をまともにみた。その表情の中にあるものを探るようにダグラスは見つめる。領主はさすがに長年、領主を続けていただけのことはある。誰もが負けてしまうダグラスの視線に負けなかった。先に目をそらしたのはダグラスだった。

 俺も年取ったか・・・。

 20代後半で言われるとそれだけで他のものはいささか悲しい気もするが、話を聞いてみてもという気持ちがわき上がった。

 ダグラスが視線でたずねる。領主は片手の手のひらを出す。一本指を立てる。

「足りないな」

 また一本の指。

 黙っているダグラス。キースは強めに出ているダグラスをはらはらしながらみていた。いつもならこんなに熱くなっていることはない。お宝が手に入らなければさっさと逃げるのが常だ。

 指は増えていていつの間にか両手があげられていた。

「よし。話を聞こう」

 満足げにダグラスは言って窓際に座った。

「わしはな、この神像が泣いているような気がしてならないのじゃ。我が家系に伝わっている話やらものをみているとこの神像は一人でさびしいのだと思うようになった。老人の世迷い言と聞いてくれてもよい。わしはこの年で孫のジェシーしかいない。息子夫婦はとうに死んだ。孤独を感じるように何ってはじめて神像の気持ちに近づいた。わしはできたら炎の神像と一緒にそわせてやりたいのじゃ。だからわしは炎の神像をさがしたい。だが、わしはもう年老いた。それで・・・」

 領主の言葉をキースが奪い取る。

「噂を流して無礼講までしてトレジャーハンターを呼び寄せたわけだ」

 やなやつとでも言うキースの表情に領主が苦笑いする。

「勝手なのはわかっている。これまでに五組のハンターがきた。だが、すべてだめじゃった。そなたたちが合格という訳じゃ」

「ってこんなに簡単なのに引っかからないのがおかしいんだって」

 キースはすでに身分の差を超えて領主に話す。ざっくばらんな彼はすぐになじんでしまうのだ。

「だが、結果はそなたたちのものになった。そこで老人のささやかな夢を叶える手伝いをしてくれるのだ。じゃな? そこの無口な若者よ」

 領主はダグラスの意向を聞かずに尋ねる。そのいきなりの暴挙にマリアンナもキースもびびる。だが、静かにダグラスは口を開いた。

「ま、じいさんのたっての望みだ。報酬は前払いで頼む。それとわかっているのだろうな。炎の神像の情報を。知らなかったらら白紙撤回する」

 ダグラスの気合いの入った言葉に誰もが刃向かえない形になった。だが、その静寂を破ったのはジェシーと呼ばれた孫だった。

「俺も行く。行ってもいいだろう? おじいちゃま」

 領主が答える前にダグラスは却下を下した。

「遊びじゃない。お子さまはこの城でねんねしてな」

 小馬鹿にしたような言葉にジェシーは憤慨する。

「俺だってもうすぐ成人だ。遊びではないことぐらいわかってる。それに・・・」

 ジェシーが手をかざして何かをしようとしたのを領主が手ではたいた。

「痛いなー。もう。これぐらい大したことないだろう?」

「黙るのじゃ。その手は二度と使ってはならない。また孤独に陥る」

 その言葉の意味合いは三人にとってはわからなかったがジェシーには通じたようだ。

 手が震える。そして両腕で自分の体を抱きしめる。まるで自分を守るかのように。

「怖くない。怖くない。ジェシーにはわしがおる。ついていおるから安心するがよい」

 領主がなだめる。すると過呼吸気味だったジェシーが落ち着いてくる。

 なんだんだ? この二人は。キースは不可思議そうに見つめる。そのキースたちを領主は見た。

「悪いところを見せてしもうたな。今のは忘れてくれ。とりあえず依頼は炎の神像だ。今度こそ失敗しないでくれ」

「って何組失敗したのか?」

「先ほどの通り五組だ。みな行ったきり帰ってこない」

 結構寒すぎる依頼だ・・・。キースは頭の中で考える。だが、決定権はダグラスにある。キースは恩を仇で返すつもりはない。ダグラスが行くと言ったら行くのである。マリアンナも同様である。先ほどからジェシーにかまって遊んでいる。だが、耳には入っているようだ。どこかしら緊張が伝わっていた。

「考えが変わった」

 そのダグラスの言葉に皆凍り付いた。依頼を取り消すのか? すべての視線がダグラスに集中した。

「その坊主も連れていく。いいかげん甘い世界から出して適切な身の処し方を考えてもらおう」

 いつにもまして教育熱心な母親のような考えを行って、キースは笑う。

「子供と一緒に仕事をしたこともないのによくまぁ、そんなことを」

「たんなる気まぐれだ」

 そういってダグラスは立ち上がった。

「細かいことはまた明日訪れて聞く。坊主も旅の準備でもしてな」

 そういってダグラスは扉の向こうに消えていく。

 キースがあとをおい。まってよぉ、とマリアンヌまでがかけていく。

「あの人たちで大丈夫なの?」

 不思議そうにジェシーが聞く。

「大丈夫だろう。彼らは独特の力を持っているらしい。ジェシーにはいい機会かもしれぬな。わしは寂しいが。若者は経験して大きくなるのじゃ」

 そういって少し領主は悲しげなまなざしをジェシーに向けた。悲しみから本来の自分から閉じこもってしまった孫。この孫の心を開いてくれるのは彼らかもしれない。淡い期待を抱いて。領主はジェシーを抱きしめた。

 

 

 

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