Alice in the sky 〜躁鬱と創作と時々朱印〜

日月水でやってきましたがなかなか更新できず今後不定期となります。申し訳ありませんがよろしくおねがいします。長年統合失調症と思ってましたが今日躁鬱病と訂正入りました。改めて心の病持ちでよろしくお願いします。
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# 銀のしずく 金のかがやき 気分は上々TRY〜天を仰ぎ見て〜 最終話 地上の城

JUGEMテーマ:ファンタジー恋愛もの

 

「このでっかい河の洞窟全部たどるのーっっ?!」

 レティシアは目の前に広がる大河を見て大声を上げた。

 いえ、とポロンは言う。

「それには及びません。私が探します」

「だから探すのは同じ・・・」

「わかるんですよ」

 レティシアの言葉をさえぎってポロンは言った。

「何か惹かれるものがあります。それをたどればきっと」

 いかに罪人の証があろうと半神である。能力は十分ある。

 そしてそこにあの人もいる。ポロンの中に予感があった。主がそこで待っている。自分を高みに戻そうとして・・・。地と天。私はどちらを選びたいのだろう? ポロンの中で何かが渦巻いていた。

 クレドはレティシアに目で合図を送った。レティシアは不思議な雰囲気をかもし出しているポロンに気づいて押し黙った。

 ポロンはそっと足を踏み出した。

 河に沿ってゆっくり歩いていく。山あり谷あり。決して平坦な道ではない。岩がごつごつとした場所もあれば野の花咲く平地もあった。何日もかけて河をたどる。

 幾日しただろうかポロンは後ろについて歩いていたクレドとレティシアを振り返った。

「ここから山に入ります」

 そう言って木の枝を折るとそれを使いながら森の中へ入っていった。クレドたちも同じようにして森に分け入っていく。

 いくら歩いただろうか・・・。

 ぽっかりと空洞があるのを見つけたレティシアは叫んだ。

「あそこね!」

「はい。ですが、ここからが勝負ですよ」

 にこやかに笑顔でレティシアにポロンは声をかけた。きっと緊張が高まっているに違いないのにそれを微塵も見せないのはさすが唯一神に仕えていた祭司の強みか・・・。クレドは同じような身分であるにもかかわらず心根の強いポロンに強い畏敬の念を抱いた。

ポロンは分け入るために使っていた枝を今度は杖にして歩き出した。急に高低の激しい道に変わった。

「クレドーっ。手を引っ張って。あ、あがれないーっ」

 小さな段を前にしてレティシアが情けない声を上げる。それを見たポロンはくすくす笑う。レティシアの素朴な行動は気持ちを楽にさせてくれる。

「しょうがないな」

 まんざらでもない様子でクレドはレティシアの手を引っ張りあげた。

「もうないでしょうね。こんな段差」

「わかりません。そのときはクレドが引っ張りあげてくれますよ」

 ポロンの言うとおりにだんだん段差が多くなってくる。まるで来るものを拒むように。

「本当にここなのか」

 クレドも心配になってきてポロンにたずねる。

「額が示しています。うずくんですよ。どくんどくんと、ね。あのお方も待っています」

「この期に及んでか?」

 誰が待っているかすぐにわかったクレドが怒りの声を上げるとポロンはうなずく。

「はい。わかります。伊達に何千年もともにいたわけではありません・・・」

 運命の歯車が動いているのか。宿命なのか・・・。未知なる物に導かれてポロンは突き進んでいた。

またもとのくびきに戻るのか? ポロンの中では何度も問いが交錯していた。私はどうしたいのだ? 追求しようと思えば思うほど答えは遠のく。まるで霧の中に飲み込まれたように。

「もうないでしょうねーっ」

 ぜーはーと息を荒げてレティシアが最後の段差を上り終えた。

 はい、とポロンは簡単に答える。

「あとはこの道をまっすぐ行けばいいだけです」

「はぁ。クレドがいなかったら路頭に迷っていたわ」

 げんなりするレティシアを見てポロンは微笑む。

「笑わないでよ。か弱き乙女なんだから」

 ぷっとポロンとクレドが吹き出す。場がなごんだ一瞬だった。

 歩いているうちに洞窟の入り口がぱっくりと開いていた。中は暗い。その中に本当に天使の涙は待っているのか。わからないものへの恐怖にレティシアは身震いした。クレドがレティシアの手をぎゅっと握ってやる。

「ありがと」

 小さくレティシアは言って手を握り返した。

「光が必要ですね」

 ポロンがそういうと手のひらを上に向けた。ぽうぅっとそこに光がともった。

 ポロンの先導でクレドもレティシアも中に入る。

「気をつけてくださいね」

 ポロンが言う矢先に足が躓きそうになる。ひんやりとした空気がほほにふれる。

「冷たい・・・。この中に・・・。この奥にあるの?」

 誰に言うとでもなくレティシアはつぶやいた。

 進んでいくと急に光が満ち溢れた。あまりのまぶしさにポロン以外はまぶたを閉じた。

「ポロン・・・」

 威厳のある声がポロンの名を呼んだ。聞き覚えのある声にレティシアはばっとポロンの前にでると怒鳴りつけた。まぶしかろうとレティシアには関係なかった。

「どの面下げてここに来たわけ? あんたのせいでポロンはこんなに・・・っ!」

「レティ!」

 クレドがレティシアを下がらせて後ろ手に守る。

「ポロン。私が悪かった。帰ろう。私たちの空に。迎えに来た。どうか許してほしい」

 さびしげな声にレティシアもぐっとつまった。一応反省はしているのだろう。だが、ポロンがはらった代償はあまりにも大きい。そんな言葉で取り消せるものではない。

 私は・・・、ポロンが言う。

「私はあなたにはむかいました。それは今でも悪く思っていません。いつはむかうかわからぬものをそばに置くのですか? 同じような司祭ならカディスにいくらでもいるではないですか。 あなたに今あって私の考えははっきりしました。私は「人」になります。あなたから離れます」

 きっぱりとポロンは言い切った。光が少し弱まった。

「私を置いてくのか? 私を。長年二人だけで培ってきたものを捨てて。それにお前が・・・。いやそれはかまわぬ。私はお前に戻ってもらえたらそれでよい。罪人の証はすぐに消そう。だから帰ろう。私たちの城に。空に。帰ろうポロン」

 帰ろうと繰り返して言う神はまるでだだをこねる子供のようだった。頼りない声で話す。威厳からは程遠い声である。だが、ポロンは動じなかった。

「私はあなたを尊敬していた。あなたの考えがすべて正しいと思っていた。だが、私はついてけません。「私」を見つけたのです。あなたを愛しいと思う。けれどもその呪縛にもうとらわれたくはない。わかってください・・・」

 ポロンはそう言って洞窟内に満ちている光の中に入った。いや、神のわきを通り過ぎたのだがクレドたちには何も見えなかった。

「ポロン!」

 クレドが名を呼ぶ。

「大丈夫です。すぐ戻ります。・・・ああ、これですね」

 ポロンの声が聞こえたかと思うと手に何かをもって戻ってきた。小さな箱。そっとポロンはあける。中には光沢を放った真珠のような宝玉がひとつぶあった。それをポロンは手に取る。

「これが天使の涙です。もうとめられない。とまらないのです」

 ポロンはなぜか涙声で言うとそれを口に入れた。

 一瞬ポロンの姿がすっと消えた。光も一緒に消えた。洞窟はまた暗い洞窟に戻った。

「ポ・・・ロ・・・ン・・・?」

  クレドが名を呼ぶ。するとすぅっとポロンの姿がまた浮かび上がった。ほのかに光を放っている。

 彼は笑っていや、泣き笑いしているのだろうか。前髪をあげると額を見せた。そこにはあるはずの罪人のしるしは消えてなくなっていた。

「しるしがないわ・・・」

 レティシアがそれを認めて呆然と言う。

「そうですね。私は今から「人」です。そしてあの人も消えた・・・」

 沈みがちな声にレティシアは小首をかしげた。

「うれしくないの? やっと人になったのに。あの人って・・・あのおーぼーな奴のこと?」

「そうです」

 静かにポロンはうなずいた。

「私はあの方に似せて作られた半神。片割れです。半神の私が人間になればあの方は神ではいられない。存在が認められないのです。私が半神であるからこそ彼は神でいられた。それでも私はあなたがたのような人間にあこがれた。自由な人間に。そしてまた罪を犯した。あの方を殺してしまった・・・」

 ポロンのほほにひとすじ涙が流れた。レティシアが騒ぐ。

「なんであんなやつの肩を持つの。ポロンはそれでいっぱい苦しんだじゃない。あんなやつなんていないほうがいいのよ!」

「レティ!」

 いきりたつレティシアをクレドが抑える。

「それでも私にとっては愛すべき方でした・・・」

 ポロンががっくりとひざをつく。

 そこへ赤子の声が聞こえてきた。

「赤ちゃんの声? うそでしょ? 幽霊?!」

 レティシアがクレドの腕を強くつかむ。

「いや・・・奥から聞こえてくるようだ」

 クレドがレティシアを引きずりながら進んでいく。ポロンもそれに続く。

 その奥には台座があった。それは先ほどポロンが天使の涙を見つけた台座だった。その台座に赤子が手足をばたつかせて泣いていた。額に十字のしるしがある。

「これは何のしるし?」

 レティシアがポロンにたずねる。まさか、という驚愕の思いで赤子を見つめていたポロンがはっとわれに返る。

「十字。神の証です。あの方です。この子はあの方の変わり身なのです」

「神様の赤ちゃん?」

 信じられないといった風にレティシアが言葉を口にする。

 いえ、とポロンが答える。

「私が人であれば片割れのあの方も人。もう神ではありません。そのしるしに光に満ち溢れていません。目に見える形であの方がいる。この子は私の罪を洗い流してくれるでしょう。この子とともに生きます。今度はもっと幸せな「人」としての生活を・・・。長い間に忘れてしまった普通の生活を送ります。ああ、私はあの方を殺してはいなかったのですね・・・」

 感極まってポロンが息を吐くように静かに言う。ポロンが赤子を抱き上げるときゃっきゃと赤子は喜んで声を上げた。そのほほにポロンはほほをすり合わせる。

 そして、三人と赤子は洞窟を出た。春のうららかな空が広がっている。

「さよなら。私たちの天空の城よ。今度は地上の城に住みましょう。地上に礎を築きましょう」

 三人の心は晴れやかだった。もっとも明るい表情をしていたのはポロンだった。

「気分は上々・・・といったところでしょうかね」

 ポロンがそういうと赤子がこぶしを突き上げた。

「あなたもそうですか。そう名前を考えなければなりませんね。道々考えてまいりましょう」

 人としての幸せを手に出来るかは自分たちの手にかかっている。ポロンは気持ちを新たにして洞窟を後にした。

 ポロンと赤子。この二人にどんな物語が待っているか。それはまた別の話である。

 

 気分は上々TRY

 

 

 

| comments(0) | - | 10:55 | category: 銀のしずく 金のかがやき5 |
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