Alice in the sky 〜躁鬱と創作と時々朱印〜

日月水でやってきましたがなかなか更新できず今後不定期となります。申し訳ありませんがよろしくおねがいします。長年統合失調症と思ってましたが今日躁鬱病と訂正入りました。改めて心の病持ちでよろしくお願いします。
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好き!(好き春夏シリーズラスト)

 

女の子が立ち尽くしていた。

ぽろぽろと涙を流して・・・。

目の前にいる男は何事か言うとすぐに背を翻して去って行った。

僕はナンパでもなくただ何か言いたくて声をかけた。

「あの。泣いてるの?」

女の子は反射的に身じろぐとすぐに走り去っていった。

妙にあの涙がきれいだと思った。悲しいはずの涙に。

それから何日たっただろう。

コーヒーショップに立ち寄るとあの女の子がいた。

彼女は店の仕事をてきぱきとこなしていく。

今度は逃がさない。

「あの。この間あった僕だけど覚えてない?」

無視。まぁ勤務中だからしかたないだろう。

だが僕は我慢ならなかった。

「おいっ。名前ぐらい名乗ったらどうなんだよ」

「名前ならプレートにあります」

機械的に答えると彼女は去ろうとした。

あの日のように。

「待って。ナンパじゃないから。ただ泣いているところ見て気になったから」

「ありがとうございます」

彼女はまたも機械的にというかマニュアル通りに挨拶して去って行った。

次はどうして捕まえよう。僕の頭の中はいっぱいになった。

あの最初にあったところでも行ってみようか。現場百回ともいうし。

僕は堤防沿いの道に向かった。

やっぱり。

あの頃咲いていた桜は散っていて青々とした葉が太陽の光を浴びていた。

彼女はなんとなくさびしそうな背中で立ち尽くしていた。

「あの・・・」

思い切って声をかける。

「あっ・・・」

動揺したのか目が泳いだ。

「あの時はすみません。仕事中だったので」

すんなりと謝りの言葉が降りてきた。ストーカーと間違えられても仕方ないのに。

「いいですよ。ただあの日泣いていたのが気にかかっていて。決してナンパじゃないんで」

「恥ずかしいところを見せました」

「恥ずかしくないよ。泣くのは自然の流れだよ。悲しかったり嬉しかったりいろいろあるよ」

「そうでしょうか。まだ割り切ってないんです。一方的に切られたから。まだ好きなんです。たぶん」

「だと思う。でもいつかいい思い出になる。僕も降られたてなんだ。だから君の涙が気にかかったのかもしれない。僕は去年の夏。花火の下で別れた。今でもその時期がきたらと怖いよ。君も怖いんじゃない?来年の桜」

「ええ」

「気が合うね。わりと。いや同病相哀れむかな?」

「引力、かな?」

女の子がぽつりと言った。

「引力」

「きっと引き合ったんです。同じ境遇の私たちが」

「名前何?僕はアキラ」

「アミ」

「アミ。かわいい名前だね」

「あ。同じアから始まりますね」

くすっとアミが笑う。

「笑うといいよ。笑ってたら幸せが来るから。医療的にもいいらしいよ。真似だけでも」

「へぇ〜」

「なんて言ってたかなキュウイ―、ウイスキィーとかいって最後に口角を上げるらしい」

「よく知ってるのね」

「アルバイト先に書いてあったのさ。今はサラリーマンだけど。ちょっと歩かない?」

「そうね」

爽やかな風の走る中ゆったり歩く。時間はいつも同じじゃない。一秒一秒変わっていく。

こうやって彼女と歩いているときも。あの凍った時間から動き出す。

「僕。一目ぼれかも。ナンパじゃないと思っていたけど話すとまさに引力かな」

「私は・・・まだ」

「いいよ。ゆっくり行こう。初めが肝心。僕だけが胸に秘めていたらいいだけさ」

「つらくない?」

「いや。あの地獄のような時間と比べたら苦にならないさ。君は今その時間を生きているんだね」

ぽつりと僕がこぼすとはかなげな笑顔をアミは見せた。

「好きにならないでもいい。いつか笑ってウィスキーって言えたらいいよ」

「それでいいの? 降られるつらさは経験済みなのに?」

「僕たちは引力で引き合っている。反作用を起こしたらその時はその時さ。また引力を探せばいい」

「楽観的ね」

「そういう人間さ」

「引力で引き合う時間楽しめたらいいわね」

「ああ」

 

そして五年後。引力で引き合う初夏が来た。

「アイ。パパに行ってらっしゃいは?」

「ばいばい」

「行ってくるよ」

そのまま背中を翻して出社しようとした僕の耳元に言葉が伝わった。合言葉。

「好き! いってらっしゃい」

「ああ。ぼくも好き! 行ってくる」

額にキスを落として今度こそ僕は駅に向かって歩き出した。

| 好きシリーズ春夏編 | 10:23 | comments(0) | - |

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