Alice in the sky 〜躁鬱と創作と時々朱印〜

日月水でやってきましたがなかなか更新できず今後不定期となります。申し訳ありませんがよろしくおねがいします。長年統合失調症と思ってましたが今日躁鬱病と訂正入りました。改めて心の病持ちでよろしくお願いします。
<< April 2019 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 >>
二千年の恋人

2004/8/15
 
「二千年の眠り姫記録達成おめでとー♪」
 思いっきり軽く言われた少女はむっとした表情を見せた。
「ってあんたたちが来た男、全部追い払ったんじゃないのっっ」
 粛々たる姫君にしては荒々しい言葉使いである。その言葉に集まっていた精霊たちが笑う。
「あたしたちの使命はあんたにいい男をつけてやることだからねぇ。術者との契約は守らないとこちらが困るんだよ」
 一番年長の精霊がため息まじりに言う。
 もっともこの精霊たちは少女以外見ることはできない。少女の体の周波数にあわせているからだ。もっとも追い払うときはすべての人に見えるホラーバージョンで見てもらうことになっている。
 ふんと少女はそっぽをむく。
「味方なんだか敵方なんだかわかりゃしないわ」
 姫君、エリアーナはつぶやく。その言葉は誰にも入っていないらしい急に精霊たちが騒ぎ出したからだ。
「おっと。仕事ですかい。ちょっくら行ってきます」
 軽いのりで精霊たちはそれぞれの担当場所に向かった。
「ほら。エリアーナも眠って」
 めんどくさい、とエリアーナは言う。輝き波打つ美しい髪の側頭部をぽりぽりかく。
「お行儀が悪いっ」
 エリアーナのそばでお目付役の精霊が厳しく言う。その声にやっとエリアーナは眠ったふりを始める。
 どうせ、こないんだから、寝てる意味ないのに。
 エリアーナは思うがぴしゃりと反論されて魔法でもかけられそうになるのであきらめる。
 眠り姫を二千年続けている姫君は名をエリアーナという。当時、隆盛を誇った国の王女であった。そしてその父親に当たる国王は魔術の得意な人物だった。彼はさまざまな術を使ってはいろんなものを使役した。そしてその中からよりすぐった精霊たちを集めて命じた。王の死後も三人の王女を守り、よき夫をさずけるように・・・と。その契約も割と早く終わる予定だった。長女、次女にはさっさと夫をつけることができた。王の存命中に術は終わると思われたが、末っ子のエリアーナにはどんな男もうまくいかなかった。もっともエリアーナの基準が高すぎたというのも一因ではあるが、彼女は父親の血を受け継ぎ、魔力を持っていた。普通の男では満足行かなかった。そして今に至る。王との契約が続行中だろうか。はたまたエリアーナの魔力のせいか、彼女の時は少女の時で止まっていた。自分はばけものだからいつまでたっても愛されないのだろうか・・・悲しい気持ちがいつもこみ上げてくるが、それを必死に明るく笑い飛ばしていた。
 一方、屋敷の前にたっている青年が一人。
 扉をゆっくり押してみる。いやな音をならして扉が開いた。
「ぶようじんだなぁ」
 間の抜けた声に精霊たちは一斉に脱力した。見目麗しい青年ではあるがどこかうすらぼんやりしたばか男に見える。精霊たちは今回もだめかとがっくりする。それに扉を開けることができなければ人がよってこない。当たり前の設定である。それを不用心呼ばわりするのはいかなることか。二千年もがんばってきたものにとってはいやな言葉である。がその間の延びた声がいらだちすら昇華してしまった。
 いっけん情けなそうな人物がエリアーナの基準にたっすることはまずないだろうと皆、一様に思った。
 青年はエルンストという。正直者という意味だ。その名前が表すとおりまったく裏表のない人間のようだ。あっけらかんとしたところが彼の特徴であった。また、天才と馬鹿は紙一重という。正直者も愚か者と紙一重であろう。
「ま、はいっちゃえー」
 さらに軽いのりでエルンストは歩を進めた。そこには最初の罠がある。三つの古びた扉。正解は一つだけ。あとはお化け屋敷直行である。
「うーん。これにしよ」
 エルンストは迷わず真ん中をあけた。普通は裏を読んで真ん中はあけない。迷いのない判断は考え尽くされたのかただ単純に選ばれたのかわからない。
 そして入るとまたホラーバージョンの精霊が脅しにかかる。この辺で結構男は脱落する。力にものを言わせる英雄型は精神攻撃には弱い。さらに魔法使いはわけわからない魔法で姫君を起こすのは面倒なので来ない。
 そしてこのエルンストは今までにない行動をとった。
「俺、エルンスト。仲良くしてね」
 エルンストはそう言って手を出し出す。担当精霊はおまえは男だろーとその乙女チックな言葉につっこみたかったが、もしかしてという期待を持って何も言わない。そしてずっと出している手を見ていると握手しなくてはいけないという気にさせてくる。敵意を好意に変える能力とでもいおうか。エルンストは不思議な男だった。握手をする。
「あ、俺方向音痴だから姫の場所おしえて♪」
 方向音痴でくるなーっ。その模様を連携能力でつながっている精霊たちは声なき声でつっこむ。眠っていたエリアーナも思わず起きあがってしまったぐらいだ。
「え? 誰か何か言った?」
 なんともいえないすっとけぶりにまたもやがっくりくる精霊たち。もう相手にするのもいやだと思った担当者は見取り図のようなものを渡した。罠をすべて制覇したときにもらえる地図だ。精霊製であるだけに現在位置と姫君のあるところがわかる。どういう仕組みかはわからないがぴこぴこ点滅している。
 エルンストはふむふむと地図を見ていたが、急に歩き出す。
 そして担当者はエルンストの首根っこを捕まえて動きを止めさせた。開いた片手で反対方向を教える。エルンストはまさに反対がわに行こうとしていた。
 あまりの方向音痴によくここまで来たものだ、と誰もが思う。
「ありがと」
 にぱっと歯を見せて人なつっこい笑顔を見せた。その笑顔は女性性の精霊がころっと転ばせた。子供っぽくひとなつっこい笑顔はどこでも母性をくすぐるようだ。
 出会う精霊をほとんど笑顔とひとなつっこさでクリアしてきたエルンストは最後の扉の前に来た。が、扉を開けたとたん深い落とし穴に首切り機、蜃気楼の罠が待っている。それらをエルンストは軽々と攻略した。
 大物かもしれない・・・。すべての精霊たちはしみじみと思ったものだ。
「お? かわいい女の子みーっっけ。どうしたら起きてくれるのかなー」
 エルンストは軽く独り言をつぶやく。
「やっぱここは最後まで・・・」
 ぼかっ。
「なんでそこまでしなきゃならないのっ! キスでしょうが。キス!」
「あら。もうお目覚め? せっかく楽しみにここまで来たのにね」
 どうしてなの、とエリアーナは心中で叫ぶ。
「いい男は脱落で、あんたみたいなしょぼい男が攻略できるなんてどうなっているのよっ。仕事なまけたんじゃないの?!」
 エリアーナはそこらに浮いている精霊たちにつっこむ。申し訳なさそうに年長精霊が言う。
「こういうわけなんであたしたちはもう使役から解放されたのよ。あとはエリアーナと彼とで話を付けて」
 そういって精霊たちはふわーっと消えていった。
「うそっ。ちょっと一人にしないよーっ」
 姫君? とエルンストが尋ねる。
「俺と一緒のほかに誰がいるのかい?」
「いたわよ。いい男を全部追い返してあんたみたいな頭に花が咲いているような男を攻略させるような精霊たちがね。あんたのおかげで皆、お役ご免で帰っていったわよ。一人でどうすればいいのよー!!」
 半泣きになりそうになりながらエリアーナは言う。
「俺がいるから安心になさい」
 エルンストが言って胸をたたく。が、その端からむせる。
「軽いやつなんか相手にできますか。あたしはもう寝るわ!」
 またベッドに横になりにエリアーナは向かう。ふっと振り返る。
「あんた、私を取りに来たんじゃないの?」
 いっこうに引き留める気配もないエルンストに不思議そうに尋ねる。
「いや、俺は修行してこいって言われただけだから」
 エリアーナの頭の上から湯気のようなものがでてきそうな雰囲気にエルンストもさすがに申し訳なさそうな表情をする。
「修行ぐらいでくるなー!! あたしの人生を返せー! 二千年眠っていたあたしはどうなるのよっ」
「二千年? それはご苦労様。この際、俺と結婚しない?」
 何やら女の子を引っかけるような口調にエリアーナはエルンストをまたなぐりたくなる。
「うちの国、女の子の数が少ないんだよ。だからつりあう女性もかなりいないし、おばさんばっかりでさー。そのうちの誰かと結婚するぐらいなら姫君の方が断然いい。って俺名前とか言った? 俺はエルンスト。姫君は?」
 にこにこと笑いながらエルンストは言う。エリアーナはこめかみをおさえながらめまいにたえる。
「エリアーナよ。少しは勉強してきてもらいたいわね」
「ごめん。悪かったね。でも一人は寂しい。よかったら一緒に来ない? すくなくとも人並みの人生歩けるよ。俺がいやだったらほかの男に乗り換えてもいいしさ。男だけはあふれてるからね」
 どこか寂しげな声にエリアーナはふっとエルンストを見る。彼に何があるのか。あれだけあっけらかんとしているのに。エルンストの本当の心が見えた気がしてエリアーナはじっとエルンストを見つめてしまった。エリアーナはふぅとため息をつける。
「試用期間を設けもいいっていうならいいわよ。だけどだめだったらほかの男にのりかるかここに戻ってくるわよ」
「じゃ、早速行こう」
 エルンストが手を握ろうとするのをエリアーナはさける。
「試用期間っていたでしょ。あたしにふれないで落とすのね」
 ふふっと意地悪な微笑みをエリアーナが浮かべる。さしずめ小悪魔の微笑みと言うところか。
 
 二千年ぶりに出会った恋人たち。彼と彼女の物語はこれから始まる。
 
 
あとがき
 
二千カウント記念創作です。今のカウントは480だけど。
一時は隆盛を誇ったときもあったのですよ。

2004/8/15
 
| 短編 | 00:42 | comments(0) | - |

RECOMMEND
SELECTED ENTRIES
CATEGORIES
ARCHIVES
RECENT COMMENT
クリック募金
クリックで救える命がある。
広い空へ

アニメキャラと自分の夢の分身を恋愛させた禁断の二次。こっそり復活中。私を知ってる人は混乱必須。なんとなーくリンクを張る。リニューアル。アドレス変わりました。
空色の・・・。

本家本元創作空間空色の・・・。 ここで紹介した話がいろいろ載っているページです。このたびコラボページをリニューアルしました。勘違いもでるかもしれませが楽しんで読んでいただければ幸いです。
メルマガ
メルマガ購読・解除
 
モバイル
qrcode
LINKS
PROFILE
ADMIN